43歳「4つの稼ぎ方」並行する男の快活な人生 どれかがダメになっても自分の心は腐らない

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初めての個展では、たくさん撮った自分の顔写真を拡大コピーして、その上から色を塗り別人の顔にした。そんな作品を壁一面にズラッと並べた。同一テーマの作品を並べて展示するというスタイルは、現在の個展の手法に通じている。

大阪のクラブ(ディスコ形態のクラブ)のイベントに参加して、店内に飾る絵を描いたりもした。店のオーナーが絵を気に入って購入してくれることになり、大学の先生に相談して値段を決めた。

「大学ではクラスメイトとあまり仲良くなれませんでしたね。あいさつが返って来ない地味目の子たちと大阪出身のイケイケの子、そのどちらにも属せないでいました。美大特有の『プライドは高いけど絵は描かずに飲むと大きなことを言う』みたいなヤツも多かったです」

大学途中でグラフィックコースをやめ、マーケティングコースに入った。授業は絵を描くよりも広告や商品開発の内容に変わった。

イラストレーターになりたいという気持ちもあったが、すぐには無理だろうと感じて就職活動をはじめた。

「当時『わさビーフ』っていうお菓子が大好きだったんですよ。それで『自分の絵が入ったパッケージを作りたい!』 って思って、わさビーフを作っている山芳製菓をはじめ、カルビーや湖池屋など菓子メーカーの入社試験を受けました」

面接では、「 わさビーフのパッケージを作りたいです!」と訴えたが「デザインは外注してます」と言われてあっさりあきらめた。

結局、京都のデザイン会社に就職した。パッケージの部署に配置されたので、はからずもお菓子のパッケージをデザインするという夢は少し叶った(ただし和菓子だった)。

会社はデザイン事務所だが、営業職の数が多く、大多数の社員はスーツで出勤していた。会社に行くと朝礼で営業的な話を聞かされた。いかにもな感じのゴルフ焼けした営業部長が「タイガー・ウッズを目指せ!!」などと、全然ピンとこない激励をしてくる。

私服でポロシャツを着ていくと裾をズボンの中に入れろと怒られた。

「会社の寮から会社に行く時、毎日お腹が痛くなってました。1年ちょっとでしたけど続けられたのは、各部署で働く人たちを観察対象として見ていたからかも知れません。やっぱり総務には可愛い子がいるとか、系列の印刷所のおじさんは怖いとか。今まで会社員の仕事と生活を見ることなんてなかったから、そこだけは興味がありました」

紙粘土で作ってみたら面白い作品になった

会社にいる時に立体の作品を作り始めました(写真:筆者提供)

会社にいる時に、立体の作品に取り組んだ。粘土作品は高校の時にも作っていたが、今まで人には見せてなかった。

会社が休みの土日に、怖い顔をした同級生の顔を描こうと思ったのだが、描き始めると、

「これは立体で作ったほうが良くなるかも?」

と思いついた。実際に紙粘土で作ってみたらとても悪い顔で面白い作品になった。

それに紙粘土を指でこねる感覚はとても良い。小学校の時の図工の授業で粘土を触ったのを思い出す。

「粘土は触っているだけで、脳に快感物質が出てるんじゃないかと思いますね」

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