43歳「4つの稼ぎ方」並行する男の快活な人生 どれかがダメになっても自分の心は腐らない

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その後、会社の中でカレンダーを製作する企画にデハラさんが選ばれ、毎日一匹立体の人形が出るレイアウトをした。

「かわいいし、使い勝手も良いし、立体は使いやすいと思いましたね。将来フリーランスになった時も、立体造形でいけるかも……とボンヤリと思いました」

しかしつくづくサラリーマンは向いていないなと思った。よく二日酔いで遅刻していた。

「俺、会社辞めるから」と言いつつズルズルと辞めない先輩たちを尻目に、入社後1年3カ月で退職願を提出して退社した。

ちょうどボーナス貰った直後だったので、白い目で見られた。フリーランスとしては東京で仕事をするつもりだったが、いったん地元高知県の実家に帰った。売り込み用の作品ファイルを作るつもりだったが、ついつい就職をしてないダメな友達と会ってダラダラ酒を飲んでしまう。

「飲みすぎて2人で実家のじゅうたんにオシッコもらしたこともありました。親は『コイツはいつになったら東京に行くんだ?』って呆れてました」

結局、作品ファイルは完成しなかったが、とりあえず上京した。1998年の夏だった。とりあえず何のコネクションもないので、雑誌社に電話をして持ち込んだり、異業種交流会があると聞いて参加したりした。イラストレーターの個展にも顔を出した。その過程で、バイトをしながら絵を描いている人たちにたくさん会った。中には10年、15年とバイトを続けている人もいた。

「売れてない人の作品も良いんですよね。良いだけに悲壮感を感じました。良い絵を描くからって売れるわけじゃないんだと思って……。なのでバイトしながらコツコツ持ち込みをするというのは難しいと思いました」

だったら一気に食えるようになるしかない。

2年でプロになると決意

立体は珍しいので興味をもってもらえた(写真:筆者提供)

2年でプロになると決めた。

「イラストを持ち込むと編集さんがパラパラっと見て好き勝って言って追い返されることが多いんですよ。編集さんも仕事がら、2次元の絵は見慣れてますから。でも立体は珍しいので興味をもって話をしてもらえることが多かったですね」

編集者からは「これってそもそもなんの素材できてるの? どうやって作るの?」と聞かれることが多く、中には紙面では使えないけど、個人的に欲しいから売ってと言われることもあった。

「そうやって興味を持って話してもらえると、たとえ断られても傷つかないので助かりますよね」

立体作品の場合、掲載が決まるとカメラマンに写真を撮ってもらうことになる。社内カメラマンに

「これニスのツヤが邪魔だなあ、どうにかならないの? 普通立体はマットでしょ!」

と不満を言われたこともあった。

「テカりわざとです! なんとかして下さい!」

とお願いした。

「怒られたけど、実際に印刷物になってしまうと別におかしくなかったですね。そして掲載された本を持ってまた持ち込みに行って、仕事をつなげていきました」

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