仕事でミスを連発する人は「トヨタ式」に学べ 原因を知り、共有し、精神論で終わらせない

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たとえば、工場の生産などで部品を取り付ける際にたくさんの部品が乱雑に置かれている箱から必要な部品を取り出して取り付けるためには「選ぶ、判断する」という過程が必要なため、余計な注意力が求められます。

これでは人によって、あるいはその日の体調によって作業にバラつきが出るのは仕方のないことです。このようなミスを防ぐためには、1回の作業に必要な部品を必要な数だけ箱に入れ、並べ方も統一して、作業をする人はただ部品を手に取って、そのまま付ければいいように改善すればいいのです。そこには「選ぶ」も「判断する」もありませんから、たとえ「気を付けていなくても」ミスをする確率は減ることになります。

つまり、「気を付けて」に頼るかぎり、ミスをなくすことはできませんし、「気を付けて」を対策として認めるかぎり、同じようなミスは何度も繰り返されるのです。

A社では「気を付けて」以外の対策を考えようと、「なぜミスが起きたのか」を調べたところ、原因は新入社員以外のところにありました。書類の封入作業は午後一番に行われ、その日の夕方までに投函することになっていました。そのため、封入する書類は遅くともその日の午前中には作成して必要な枚数をコピーすることになっていましたが、午前中、担当者に急ぎの仕事が入ったため、3枚の書類のうち2枚しか作成できず、1枚は午後にずれ込んだのです。

つまり、午後一番から封入作業を予定していたのに書類は2枚しか用意できておらず、作業に入ることができませんでした。午後になって担当者は慌てて残り1枚の書類の作成に取りかかりましたが、あまりに急いだため間違った書類を作成してしまいました。封入作業に必要な時間と投函の時間を考えれば、まさにぎりぎりでした。そのため、担当者の上司もしっかりと確認することなく、そのまま封入作業に回してしまいました。

「書類を3枚封筒に入れて時間までに投函してください」という指示しか受けていない新入社員に書類が正しいか間違っているかを判断できるはずもありません。

その結果が書類の封入ミスでした。もし「気を付けよう」で片づけていれば、こうした「真因」にたどり着くことはなかったでしょう。

「ミス再発防止ノート」を作成しよう

小さなミスや初めてのミスにも必ずどこかに原因があるのです。その原因をしっかりと究明することなしに、「これからは気を付けて」「仕事のときはしっかり集中して」と言うだけでは小さなミスはやがて大きなミスになり、初めてのミスは何度も繰り返すミスになっていくのです。

こうした取り組みはトヨタ式のように本来は全社で行うことが理想ですが、それが無理ならミスをするたびに「ミス再発防止ノート」を自分なりに作成することをおすすめします。

たとえば、初めてのミスであれば、どうしても慣れていなかったり、十分な指導を受けていなかったりしたという理由も考えられますが、だからといって「慣れていなかった」「教えてもらっていなかった」という理由だけで納得するのではなく、

□どんなミスをしたのか

□なぜミスが起きたのか

□ミスを防ぐために はどんな対策が考えられるのか

といった点について考えて、ミス再発防止ノートにまとめるといいでしょう。

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