「どん兵衛」と湖池屋のCMが心をつかんだ理由 2017年は消費者を動かしたCMが多かった

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以上の2社以外にも、テレビCMを通じて売り上げにつながった企業の成功事例を見るにつけ、改めて消費者の購買行動に「テレビCMは効く」と感じている。

CM好感度調査から見える消費者マインドの“好感ど真ん中”にあるワードは「おもしろい」。

「面白し」が語源とされるこの言葉は、「面」が目の前を意味し、「白い」は明るくてはっきりしていることを指すと辞書にある。「興味深い」「滑稽な」「快い」「風流な」「好ましい」と実に意味の奥が深い言葉である。このキーワードは、CM総合研究所が調査を開始した30年前も消費者マインドの中心にあった。世の中は大きく変わっても、「おもしろい」ことは人の心を動かすということであろう。

2018年のCM動向は

行く年の後は、来る年2018年のCM動向を少しだけ占ってみたい。

2月には平昌冬季五輪が開催される。世界が注目するスポーツ大会は最強コンテンツのひとつだ。羽生結弦、高梨沙羅選手はすでに複数企業のCMに起用されているが、日本人選手の活躍次第では新たなスターが誕生するかもしれない。

注目キーワードとして挙げられるのは「AI技術のビジネス化」。すでにロボット、家電、医療、自動車などあらゆる分野でAI技術を搭載したビジネスの競争が始まっている。なかでも注目したいのはスマートスピーカー。先行する『Amazon Echo』を追って、日本でも発売が相次ぎ、『LINE Clova』や『Google Home』はすでにCM展開が始まっている。

消費者マインドを寡占化している通信業界については、まだしばらくこの趨勢は続きそうだ。『au』の「三太郎」シリーズは毎年、正月早々に新CMをスタートして話題を集めているが、はたして2018年はどうだろうか。新しい「白戸家」となった『SoftBank』の展開や、『NTT DOCOMO』の新しいゲストも気になる。

通信業界以外にも、特に三が日には、企業が気合を入れたスペシャルなCM作品が多く放送される。テレビ番組だけでなく、テレビCMにも注目が集まりそうだ。

関根 心太郎 CM総合研究所 代表

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せきね しんたろう / Shintaro Sekine

1973年生まれ。1999年株式会社東京企画/CM総合研究所に入社。システム開発・データベース構築の責任者を経て2014年より現職。消費者3000人を対象としたCM好感度調査を中心に、テレビCMの広告効果測定および研究分析を実施。このほか企業へのコンサルティングや情報提供を通して、広告活動の最適化に向けた課題解決のサポートを行っている。

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