「どん兵衛」と湖池屋のCMが心をつかんだ理由 2017年は消費者を動かしたCMが多かった

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そんな中、ランキングで異彩を放つのは、『Amazonプライム』。昨年の赤ちゃんと犬の心の交流を描いた「ライオン」篇、子馬と女性調教師の「ポニー」篇、そして祖母の笑顔と孫の優しさが胸を打つ「モーターバイク」篇と立て続けにヒットを飛ばしている。CMで描いた情緒的なストーリーが老若男女を“ほっこり”させ、Amazonのブランドイメージを醸成することに成功した。

ランキングとは別に、CM総合研究所では毎年CMのヒットが業績の向上に貢献した「消費者を動かしたCM展開」を選出している。今年は93銘柄あり、その中から特に「今年らしさ」「創造性」「影響力」等の観点に優れたCM展開として、10銘柄を特別賞として選出した。

『日清のどん兵衛』と湖池屋が特別賞

今回はその代表として、2社のブランドを紹介したい。

まずは日清食品の『日清のどん兵衛』。41年目を迎えたロングセラーブランドであるが、和風どんぶりのジャンルは若者からは「上の世代の食べ物」という印象をもたれがちだ。そのイメージを一新しようと、「どん兵衛を食べる男」星野源ときつねうどんの化身「どんぎつね」役の吉岡里帆が演じる不思議なストーリーの新シリーズに挑戦したという。

立ち上げのWeb施策や、同じ「きつね」つながりで実現したアニメ『けものフレンズ』とのコラボなど、ユニークで新しいことに挑戦する日清食品らしさを感じられる展開でヒットとなった。

日清食品ホールディングスの執行役員宣伝部長の鈴木均氏は「CMの世界観を生かし、テレビCMだけでなく紙媒体やインターネットの広告やネットニュースに取り上げられ、多様なメディア展開を実現した。結果として戦略ターゲットに据えた高校生・大学生の若者の喫食率が男女で大きく増加した」とその効果を解説した。

もうひとつは、2017年2月に新発売した湖池屋の「KOIKEYA PRIDE POTATO」。

近年の湖池屋は、菓子市場の低価格化と新製品の競争激化で苦戦、新商品のヒットからも遠ざかっていた。『カラムーチョ』『ポテトチップスのり塩』などの商品名と比べて、社名の「湖池屋」の知名度が弱いことも課題であった。そこで、商品の新発売にあわせて漢字の「湖」のロゴを全面に押し出し、コーポレートイメージを刷新した。CMで「♪100%日本産のいもを〜」と力強く歌い上げているのは、“歌うま現役女子高校生”の鈴木瑛美子。CM初出演ながら、あまりの歌のうまさで話題となり、Webでの再生回数は100万回を大きく超えた。メディアにも多数取り上げられると、当初想定の販売量を発売後約1週間で完売し、菓子業界でのヒットといわれる年間販売金額20億円を発売5カ月で達成したという。

湖池屋マーケティング本部マーケティング部 部長の柴田大祐氏は「この1発のCMに湖池屋の社運を懸けた。社員一同やってよかったと考えている」と当時の決意を語った。老舗企業である「湖池屋」の企業ブランドや商品の価値を再発見し、それを思い切ったCM表現で具現化し、リブランディングに見事に成功したCM展開であった。

歌うま女子高生の鈴木瑛美子の力強い歌声は話題になった。
次ページ来年のCM動向はどうなるのか
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