iPhoneユーザーが苛立つ「速度制限」の正体 これはどれほど深刻なことなのか?

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スマートフォン以前、ケータイの時代から、バッテリーは非常に重要なモバイルにおける要素であり続けてきた。

バッテリーには、持続時間を長持ちさせるという技術的な進歩だけでなく、「通信し続けられる可能性」を決定するコミュニケーションや心理面での意味合いも生じてきた。

通信できなくなっては不安が生じるとして、モバイルバッテリーを持ち歩いたり、通信が途切れがちで消費電力が大きくなる地下鉄で電源を切ったり、「機内モード」にしておくなど、バッテリーを長持ちさせる対策がユーザーの間でも共有されてきた。

アップルはiPhoneについて、これまでユーザーがバッテリーパックを自由に交換できる仕様を採用したことはない。バッテリーを交換できない点は、旅行中などで充電できない環境での不便さや、今回の問題のようにバッテリー劣化の改善をユーザー自らで解決できない点は、常に指摘されてきた。

アップルは高性能と省電力性を追究してきた

ただアップルはこれまで、バッテリー対策を先進的に進めてきたメーカーでもある。ハードウェアとソフトウェアの双方を自社で開発し、しかもハードウェアについても、アプリケーションプロセッサ、グラフィックス、モーションセンサー、画像信号プロセッサなどを自社のデザインとし、高性能と省電力性を追究している。

実際、Androidスマートフォンよりも少ないバッテリー容量で、長いバッテリー持続時間を実現しているのがiPhoneだといえる。iPhone Xでは、バッテリーサイズも大きくなっているが、iPhone 7より2時間長いバッテリー寿命を実現した。またデバイスをユーザーが開け閉めしない前提とすることで、金属ボディや薄型化、防水といったデザイン面・機能面の自由度を担保してきたのだ。

今回のバッテリー問題では、バッテリーを含むiPhoneの性能に関して、ハードウェア、ソフトウェアがどのように動作するのか、という透明性の問題を解決して、ユーザーにていねいに説明する必要がある。またApple Storeでのバッテリー交換というほぼ唯一の解決策について、告知を徹底すること、交換の手続きの簡略化・作業の迅速化などの対策を推し進め、ユーザーの理解を得ることに努めていかなければならない。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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