「時給30万円稼ぐ」という時代はやってくるか タイムバンクが狙う「個人の時間価値」の復権

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メタップスの佐藤航陽CEOは、「会社と比べて、個人の時間価値は不当に安すぎた」と指摘する(撮影:田所 千代美)
「Time is money(時は金なり)」という諺はあまりにも有名だが、これを体現するサービスが出現した。スマートフォンのアプリ収益化支援やオンライン決済事業を手がけるメタップス社が提供する「タイムバンク」だ。
タイムバンクでは、経営者や学者、作家、アスリートなどの専門家が、空いている時間を市場に売り出す。取引所に「上場」された時間は、10秒が最小の販売単位になり、仮想通貨ではなく円で取引がなされる。20〜60分などのまとまった時間を購入したユーザーは、ビデオチャット・対面での相談や、取材、会食など、専門家があらかじめ設定した「リワード」に応じて実際に利用することが可能だ。個人の価値にフォーカスしているが、明確に「時間」を価値の拠り所としている点が特徴的といえる。
メタップスの佐藤航陽CEO は、11月30日に発売された最新の著書『お金2.0』でポスト資本主義の概念として「価値主義」を提唱。同書はAmazon書籍総合ランキング1位を獲得し、注目を集めている。個人の時間は、新たな通貨となり得るのか。サービスに込められた哲学、今後の展開などを聞いた。

時給100万円を超える人も現れる

――タイムバンクでは、高い人では1秒100円を超える人が複数出てきていて、時給に換算すると30万円以上になります。一番低い人でも今のところ1秒3円を切る人はいません。事前の予想では、ここまで高くなるとは考えていなかったでしょうか。

数字もユーザーの行動も、ほぼ事前の予想通りでした。個人が持っている時間の価値は、これまで低く見積もられすぎていたと思います。労働についての評価は特殊で、あくまで現時点での、その瞬間の価値しかないとされています。つまり、その人に対する未来への期待というものは織り込まれていない。ところが、企業はそうではありません。

企業の株価は、利益を出せると一気に5倍や10倍に高騰することはよく見られる現象です。将来の成長率への期待を加味して株価収益率(PER)も出ていて、未来も含めて評価されています。しかし、個人については今後の活動に対する期待値を含めて、未来の価値を割り引くという発想になっていない。

一度会社に就職してしまったら、低額で固定されてしまいます。普通に会社に勤めていれば、すごく頑張って成果を出したとしても、給料が突然5倍や10倍になったりはしませんよね。個人の時間には価値があるにもかかわらず、会社がなぜ安く買えているのかといえば、それは価値を比較する場所がなかったからだと思います。

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