2018年は1ドル=100~105円まで警戒 高すぎるドルの調整役がユーロから円へ

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一方、ユーロやメキシコペソを大きく押し上げるだけの個別材料は確かにあった。今年夏までの相場を簡単に振り返ると、ECB(欧州中央銀行)はドラギ総裁のポルトガル講演(6月)を境に金融政策正常化のビギナーとして一気にクローズアップされ、ユーロ買いが加速した。結果として、今年のユーロは対ドルで安値から最大でプラス17%も上昇した。

また、メキシコに関しては、就任前に不安視されていたほど米国トランプ大統領の"口撃"はなく、NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉や国境の壁の建設などもさほどの動きは見られなかった。むしろ前年の通貨急落がインフレ懸念につながり、メキシコ中央銀行が利上げしていたことも重なって、メキシコペソへの投資妙味が前向きに評価された。結果、今年のメキシコペソは対ドルで安値から最大20%も上昇した。今年の為替市場の主役は、実はユーロやメキシコペソだったように思われる。

円相場のリスクはやはり円高方向

しかし、2018年について展望すると、周知の通り、ECBの正常化プロセスはすでに腰が引けており、昨年と同じようなモメンタムを期待するのは相当難しいとみる(詳しくは筆者記事「ECBの金融緩和からの『出口』はかなり難しい」)。メキシコペソも9月以降、NAFTA再交渉が混迷の度を深めており、同国の大統領選をめぐる不透明感も相まって、敬遠する流れが始まっている。2018年はもうこの2通貨の快進撃を期待できないだろう。

一方、2017年初めまでの5年間で30%弱も上昇していたドルの名目実効為替相場がまだマイナス6%しか戻していない事実は残る。また、今後、米国の金利上昇の公算は小さそうだ。これらを踏まえれば、ドル高の調整はまだ道半ばではないか。今年、ドル売りの「受け皿」となってくる候補は「ドル相場におけるウェートは大きいが調整の進んでいない通貨」になると考えられる。その最右翼は現時点で「円」である。

円は米財務省が為替政策報告書で「実質実効為替相場(REER)ベースで見て、長期平均よりも20%割安」と指摘している通貨だ。基礎的需給環境が円買いに傾斜しているという事実もある。2017年にドル売りの影響を被らなかった分、円相場のリスクは円高方向に広がったまま放置されていると見ている。

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