【産業天気図・商社】資源相場調整でも年間契約の原料炭、鉄鉱石が牽引し08年度は晴れだが、09年度は不透明感増す

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予想天気
 08年10月~09年3月   09年4月~9月

総合商社の2008年度後半は、資源高の調整と新興国の減速懸念はあるものの業績的には引き続き「晴れ」。しかし、09年度前半は先行き不透明感から「曇り」となりそうだ。
 
 すっかり資源銘柄となってしまった総合商社株。原油価格の調整を受けて株価はさえない動きが続いている。しかし、08年度の業績は好調に推移するだろう。

08年4~6月期(第1四半期)決算では、各社の今期業績予想に対する進捗率はおおむね堅調で、予想を上回る企業も少なくなさそうだ。資源関連は12~1月の決算が多く、こうした会社の場合は、4月以降の原油価格の急上昇は7~9月期(第2四半期)以降に効いてくる。三菱商事<8058>の豪州石炭事業は3~4月の決算だが、年初の大雨影響や07年度価格の積み残し分があるため、第2四半期以降に利益拡大が見込める。つまり、第2四半期以降は第1四半期よりも利益的に強含む可能性があるからだ。

今期、もっとも強いのは三菱商事<8058>。08年度に3倍超に値上がりした原料炭(強粘炭)で世界有数の権益を持っているため、この事業の利益が飛躍的に増加するからだ。豪州の豪雨で減産を余儀なくされていたが、三井物産<8031>は鉄鉱石の権益で商社トップだが、原料炭ほどではないが、鉄鉱石も65%~96%値上がりしたため、業績は拡大する。原料炭と鉄鉱石は足元の相場が下落している原油等と違い、年間の価格契約であるため、値上がりによる利益増を通年で見込めるのが心強い。
 
 伊藤忠商事<8001>や丸紅<8002>も増益予想の会社予想を上回る可能性が高い。特に丸紅は電力事業などが着実に収益基盤に育っている。資源比率の低い住友商事<8053>も増益基調だ。

ただし、足元の原油価格や銅価格は調整局面にある。各社の原油価格の想定は1バレル85ドル程度であるため、100ドルを超えている現状では利益の上ブレ要因であることは間違いない。が、その余地が小さくなっていることも事実。今後、原油価格が急落するようなことがあれば、資源関連の利益増が総合商社の利益拡大を牽引するシナリオに狂いが生じる可能性がある。また、資源価格の下落は、おそらく新興国(特に中国)の減速を意味するため、新興国でのビジネスで稼いでいる総合商社の非資源関連の事業にとってもマイナスとなる。それでも、08年度は各社とも増益は問題ないだろう。

09年度は資源次第だ。原料炭はさすがに反落懸念が強い(需給次第でさらなる高値の可能性もある)ため、三菱商事は小幅減益予想。鉄鉱石はまだ上昇予想が強いが、原油の先行きが不透明感が大きいため、三井物産もほぼ横ばい。他3社は増益予想としているが横ばい圏という見方もできる。資源関連の利益が減少した場合に、非資源で補えたとしても大きく利益を増やすのは難しい。もっとも、総合商社の利益が史上最高水準にあることは変わらないのだが。
【山田 雄大記者】

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