カフェで起業する人がだいたい失敗する理由 ロマンとソロバンを両立できないと勝てない

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今より資金が少なくても開業できた時代だ。取材では、当時を知る業界関係者から「昭和時代の2度にわたる“石油ショック”で、勤め先の経営が傾いたのを機に独立した人も多かった」という話も聞いた。

昭和時代の「喫茶店」が「カフェ」(※)となり、「マスター」や「ママ」が「オーナー」や「バリスタ」や「パティシエ」に変わっても、起業の動機はあまり変わらない。

※筆者はカフェ取材を始めた約10年前、「喫茶店」と「カフェ」の違いを調べ、関係者に聞き続けた。結論は「ほぼ同じ」「店主の好み」「カフェのほうが現代的なイメージ」だった。これは今も変わらない。

固いイスのカフェ

昔と今とで違うのは、修業年数だろう。前述した“のれん分け”は、オーナーの店で15年や20年働いた従業員が認められて、同じ店名や別の店名の店を出す――という例だ。それが「徒弟制度」がほぼ崩壊した現在は、数年程度で独立する例も多い。インターネットの浸透で、世界中の情報が安く手に入るようになったのも、それに拍車をかけた。

ただし飲食店は開業も多いが廃業も多く、“多産多死の業態”だ。カフェに関しては裏づけとなる調査データがないが、業界では「3年持つ店は半数」ともいわれる。

「新規開業パネル調査」(2011~2015年。日本政策金融公庫調べ)によれば、飲食店・宿泊業の廃業率は18.9%となっており、全業種平均(10.2%)に比べて倍近い。同調査は、ホテルや旅館など宿泊業(調査時期的に“民泊”例は少ない)を含む数字だが、実質は数の多い飲食業を反映した数字といえそうだ。

早期「閉店」に追い込まれる共通項

開業して数年で廃業に追い込まれる理由を2つ挙げてみたい。

(1)「自分の城」の理想形にこだわりすぎる

(2)「収支計画」や「採算管理」が甘い

(1)は「ロマン」、(2)は「ソロバン」の話だ。具体的に考えてみよう。

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