ラーメン「幸楽苑」、赤字100店舗超の崖っ縁 「いきなり!ステーキ」転換で血路は開けるか

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新規出店についても、従来より敷地面積や席数が少なく投資額も少ないコンパクト型の路面店や、フードコート店を基本とすることを決めた。コンパクト型は座席数が1店平均35席(従来型は同65席)で、投資額は約4000万円(同6000万円)と少ない。採用人員が1店10人(同15人)で済むため、人手不足の時代にも向いている。フードコート店も、ほぼ同様だ。

「いきなり!ステーキ」出店の舞台裏

しかし、それだけでは苦境に対応できなくなり、より抜本的なテコ入れ策として出てきたのが、今回の一挙52店の閉店と、いきなりステーキの出店だ。

まず52店閉店だが、いずれも赤字店で地域的には静岡以西が8割を占める。道府県で見ると、福井、滋賀、京都、岡山、北海道からは撤退予定だ。一方、今後のラーメン店の新規出店は、東北、関東に限定する方針を打ち出した。

FC契約締結の会見で握手するペッパーフード・一瀬邦夫社長(左)と幸楽苑・新井田昇副社長(記者撮影)

幸楽苑では、業績低迷が始まった5~6年前から赤字店が増え始め、いったんは減ったものの、異物混入事故で再び増え、今回閉店する52店以外にもさらに50店程度ある。全店の2割近くが赤字店なのだ。ただ、「閉店しない50店は、閉店する52店と比べて赤字額が小さく、営業努力で黒字化できると判断した」(新井田社長)。

また、いきなりステーキ出店に関しては、新井田社長の息子である新井田昇副社長がペッパーフードの一瀬健作専務と会合などを通じて交流があり、2人の間で話がまとまったという。

ペッパーフードの一瀬邦夫社長は、「私にとって、幸楽苑の新井田社長はあこがれの方。30年以上、お付き合いさせていただいている。FC契約を機に、もっともっとやってほしい。いきなりステーキは今後、郊外店を増やす。シャッター通りの商店街にも出したい」と意気込む。

幸楽苑からすれば、急成長中で勢いのあるいきなりステーキの力を借りて、何とか会社を再生したい。新井田副社長は、「郊外店の客層はうちと似ている。それから商品特性がまったく違うので、ラーメン店とは競合を避けられる。この2点が、いきなりステーキを選んだ理由だ。出店は、既存店からの業態転換が基本」としている。

今回、閉店する52店の店名は、ペッパーフード側にも情報提供された。このため、今期の6店に続いて来期以降、競合関係などを吟味したうえで、いきなりステーキFC店に転換する店が出てこよう。

52店以外の赤字店などからも、次々と転換があるかもしれない。それらの多くが成功すれば、幸楽苑が再生に向かう可能性はある。

幸楽苑がラーメン店業態のまま、メニューや店舗運営方法を多少変えても、再生は容易ではない。それだけに、まずはいきなりステーキの最初の6店を成功させることが必要だ。

柿沼 茂喜 東洋経済 記者

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かきぬま しげき / Shigeki Kakinuma

入社以来、一貫して記者として食品・外食、金融・証券、電力・ガス・石油、流通、精密機器、総合電機、造船・重機などの業界を担当。この間、『週刊東洋経済』『会社四季報』『金融ビジネス』の各副編集長、『株式ウイークリー』編集長、編集局次長などを経て現職。

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