2030年コンピュータはどこまで人間に迫るか 格段進化の人工知能がヒトの仕事を奪う日
人工知能の急速な進歩
齊藤 元章:(以下、齊藤):わが国は2020年頃の稼働を目標に、京速計算機「京」の100倍の性能を持つエクサ(1エクサ=100京。1京は1兆の1万倍)スケールの次世代スーパーコンピュータの開発を進めています。
コンピュータの演算能力はフロップス(FLOPS)という単位で表されますが、たとえば1エクサフロップスの能力を持つスーパーコンピュータは、1秒間に倍精度の浮動小数点演算と呼ばれる計算を100京回、すなわち10の18乗回という超高速で行うことが可能です。
加えて、2030年頃にはその1000倍以上、2040年頃までには少なくともさらにその1000倍もの性能を持った次々世代スーパーコンピュータを、人類は手にすることになるでしょう。
その一方で、ここにきて人工知能(AI)も急速に進歩してきています。アメリカの未来学者レイモンド・カーツワイル氏が、1960年頃から提唱されてきた概念を2005年の著書で明確に整理して記し、「シンギュラリティ・ポイント(特異点)」、すなわち「人類の知性を超越する非生命的な知性」が出現し、その知性が人類の上に立つことで、われわれの想像を絶する社会の大変革が2045年頃にも起こると予想して大きな注目を集めています。
そして2030年には、その前段階となる「プレ・シンギュラリティ(前特異点)」が到来するとみられるわけですが、今後プレ・シンギュラリティやシンギュラリティによってどんな社会変革が起こりうるのかについて考えていく際には、お金と経済の問題が常について回るのです。
井上 智洋(以下、井上):そうですね。
齊藤:3年前には、これだけ多くの方がシンギュラリティについて議論をするようになるとは考えられなかったのですが、シンギュラリティサロンや井上先生の活動もあり、シンギュラリティもかなり浸透してきたと思います。
井上:最近では、ずいぶん世間に認知されてきましたね。