日本では、なぜ性被害者の肩身が狭いのか

ジャーナリスト伊藤詩織氏に聞く

──日本の性犯罪において、警察に行く被害者は5%以下。そのうち35%が示談などで告訴を取り下げています。何が被害者にそうさせてしまうと思われますか。

伊藤 詩織(いとう しおり)/1989年生まれ。高校卒業後にテレビ局で報道のアシスタントなどアルバイトを経験。米ニューヨークの大学でジャーナリズム専攻。2015年帰国、ロイター通信でインターン。現在はフリーで主に海外メディアで映像ニュースやドキュメンタリーを発信(撮影:今井康一)

捜査担当者が替わる度に、被害の状況を2、3時間かけて一から説明し直す精神的苦痛もありますが、警察が執拗に示談へ誘導することもあると思います。起訴して有罪にできないなら最初から扱わないほうがいいみたいな、すごく消極的な印象を受けました。

検事の意向が現場の捜査員にもプレッシャーになっている。私の場合も、捜査員から「今後この業界で働けなくなるかもしれない。今までの努力が水の泡になる」と被害届の再考を何度も促され、被害届と告訴状を提出できたのは警察に飛び込んで20日後でした。

──スウェーデンの強姦被害者救済体制を紹介されています。

ストックホルムのレイプ緊急センターの場合ですが、レイプキットによる検査も日本だと被害直後でないとダメと言われるものが、被害から10日後まで可能。検査結果も6カ月間保管される。被害者が検査や治療、カウンセリングを受け、一連の処置が済んだ後に警察へ届け出を出すかどうかじっくり考えることができる。

つまり心身ともにダメージを受けた被害者が、すぐ警察へ行かなかった自分を責めたり、あるいは周囲からとがめられたり、警察で今さら何もできないと突き放されずに済むよう配慮されている。これはとても救いになります。こういった体制が日本にも必要だと思います。

暴行・脅迫の証明の緩和を

──今年の法改正で強姦の定義や対象が広げられましたが、さらに望まれることはありますか?

一番には暴行・脅迫の証明の緩和ですね。現行法では被害者本人が暴行・脅迫を受けたことを証明しないといけないんです。でもスウェーデンの緊急センターの調べによると性暴力被害者の7割が被害の最中に体が動かなくなる擬死症状に陥ってしまう。

それで「あなたはノーと言わなかったんでしょ?」とただされてしまう。日本の社会では会社でも学校でも部活などでも上下関係が色濃く残っているので、力関係でノーと言えない、フリーズしてしまった状態でそう追及されるのは不利です。

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