小泉進次郎が憂慮した東京五輪のおもてなし このままでは1500万食を国産食材で賄えない
2017年1月16日、自民党の小泉進次郎農林部会長(当時)が都内での講演のあと、記者団に2020年の東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京大会)でのおもてなしに危惧があることを明らかにし話題となった。選手村の食堂で「国産農産物」をほとんど提供できないおそれが出ているためだ。
「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」(以下、組織委員会)は選手村などで提供される食材について、食の安全や環境保全などを要件にした調達基準(持続可能性に配慮した調達コード)を策定した。この基準は、大会の準備・運営段階の調達プロセスにおいて、持続可能性にも配慮した調達を行うために策定したものだ。
調達する物品やサービスに共通して適用する基準や運用方法について定めている。たとえば、農産物、畜産物などに個別の調達基準を設けている。それを満たすためにGAPの認証取得を求める方針を固めているのだ。
GAPとはGood Agricultural Practice(農業生産工程管理)の略だ。国際的にも広く活用されているのが、ヨーロッパ発祥のグローバルGAPだ。日本の場合、代表格は一般財団法人日本GAP協会が策定するJGAPだ。JGAPは日本の農業の実情に合わせて策定されているため、グローバルGAPに比べて取得は容易となっている。またJGAPを基に改良したASIAGAPも開発している。
現時点では、選手村などで提供される食事の安全性を担保する「お墨付き」として求められる、この国際規格の認証取得が日本の農家では進んでいない。すでに、欧米を中心に農産物の安全性などを第三者が認証する農産物の認証制度の活用が進んでいることとは対照的だ。
GAPへの対応はロンドン五輪から
GAPがオリンピックで求められるようになってきたのは、2012年のロンドン大会以降だ。「持続可能性」が特に重要な理念としてうたわれるようになってきたことが背景にある。
環境を破壊せずに経済成長は可能かという問いかけに始まるものであり、途上国の貧困問題や家畜への配慮なども含められ、広い概念に発展している。したがって、レベルの低いGAPで収めようとすれば、ロンドン大会、リオ大会と比較されることになり、国のメンツにもかかわってくる。
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