小泉進次郎が憂慮した東京五輪のおもてなし このままでは1500万食を国産食材で賄えない

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アニマルウェルフェアは人間が動物を利用することは可としながらも、飼育環境の整備や苦しみのない処分を求めている。一般的に以下の5つの自由が重要とされる。

・飢えと渇きからの自由

・不快からの自由

・痛み・傷害・病気からの自由

・恐怖や抑圧からの自由

・正常な行動を表現する自由 

しかし、日本ではこれを目的とした具体的な法規制がないのが現状である。一定の基準(ガイドライン)を記したものとして、公益社団法人畜産技術協会が発行している「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」が示されている程度である。この指針のもと、乳用牛、肉用牛、豚、採卵鶏、ブロイラー(肉用鶏)についてそれぞれ飼養管理指針が定められている(このほか、公益社団法人日本馬事協会が馬について策定)。

家畜は動物愛護法の対象外?

本来、家畜も動物愛護法の対象であるが、畜産業が同法の「動物取扱業」から除かれている。畜産動物に関する個別規定が同法にはないため、畜産動物は同法の対象から外されていると考えられがちだ。

なぜ、⽇本のアニマルウェルフェアへの取り組みが大きく遅れてしまっているのか。その理由は⽇本は畜産物の輸⼊国であり、輸出をしてこなかった国であることがあげられる。輸出をしないため、欧⽶でのアニマルウェルフェアの高まりに対し情報を仕入れる機会がなく、アニマルウェルフェアの認知度も低い状態にある。

組織委員会は畜産物の調達については、グローバルGAPかJGAPの認証を取れば、同基準に適合しているものとみなすとしている。JGAPは農産物については2007年に発表されたが、家畜・畜産物については今年3月になってようやく出来上がった。

それでも、動物福祉団体はJGAPの基準レベルに満足していない。グローバルGAPでさえ、アニマルウェルフェアの観点では十分とはいえないという評価だ。ロンドン大会では畜産に関しては英国内GAP「レッドトレクター」が主な調達基準となった(鶏卵は「ブリティッシュライオン」)。

NPO法人アニマルライツセンターは東京オリンピックに向けたサイトを作成した。今年9月からは、組織委員会が策定した畜産物の調達基準が低すぎるとして署名活動を行い、基準の見直しを求め始めた。仮に畜産物でグローバルGAP認証を得ようとした場合に、日本の畜産の現状を考えて特に問題になるのは採卵鶏のバタリーケージ飼育と豚のストール(檻)飼いだろう。

鶏卵についてのアニマルウェルフェア度の比較(写真:NPO法人アニマルライツセンター提供) 
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