「レイプ加害者」たちの意外な素顔と共通点 加害者の理解は性的暴行抑制につながる

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こうした傾向を明らかにすることが、被害者に多大な苦痛を与える性的暴行を抑制する最も現実的な方法だと多くの研究者は主張している。

「加害者を理解しなければ、性的暴行を理解することはできない」と、学術誌『サイコロジー・オブ・バイオレンス』の編集長シェリー・ハンビーは言う。それは当然ことのように思えるが、ハンビーによれば同誌に寄せられる論文では、加害者を題材にした論文は被害者を題材にしたものの10分の1程度だという。

このことは、性的暴行は大抵は男性が犯しているのにもかかわらず、女性についての問題だとみなされがちなことと関係しているかもしれない。しかし、適切な研究対象者を見つけられるかどうかもまた問題とされている。

初期の研究は主に有罪になった性犯罪者を対象にしており、それがデータを歪めたと、性的暴行の研究を長年行っているカリフォルニア大学ロサンゼルス校の心理学者ニール・マラムスは指摘する。

マラムスによると、刑を受ける加害者は「ゼネラリスト」であることが多い。「彼らはテレビや時計、車も盗む。そして性を『盗む』こともある」とマラムスは言う。

しかし、性的暴行を犯しながらも罪に問われていない加害者は「スペシャリスト」であることが多いという。つまり、性的暴行に特化して犯罪を行っている可能性が高い。

犯行を始めるのは若いとき

最近の研究は大学生などを対象とした匿名の調査に頼ることが多い。そうした調査では、被験者の回答が彼らに不利になることには使用されないと法的に保証している。また「レイプ」や「性的暴行」といった単語は使用しない。

その代わりに、被験者の行動や行為の方法をかなり具体的に尋ねている。性的暴行に関する調査の大半は、合意を得ていない性的行動に焦点を当てており、アンケート調査とその後のインタビューで、被験者は女性の意思を無視したことについて驚くほどオープンに語る。

研究によれば、性的暴行の犯罪者は高校生のときや、大学に進学して数年目という若い時期に犯行を始め、相手は顔見知りのケースが多い。

1度か2度の犯行で終わる者も中にはいる。具体的な割合は明らかではないが、犯行を続けたり、犯行の頻度が増したりする者もいる。

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