職場で「童貞いじり」する男性たちの深層心理

「性経験の多寡」がなぜ評価軸になりうるのか

本題に入ると、確かに一部の男性には、性的な経験を自分の能力に結び付けて語る傾向が見られます。そして、一部の女性に同じような傾向が見られるのも事実です。

さて、男性の場合、経験人数だけではなく、二股や不倫をしている、あるいは風俗に行ったなどのエピソードも定番です。性的な経験の豊富さがアピールのしどころであり、この文脈で童貞はバカにされているわけです。

こうした価値観を持つ男性にとって、性的な経験がないことは「問題」であり、解決する必要があります。「なんだお前は童貞なのか。じゃあボーナスが出たら風俗に連れていってやるよ」。もし、このような会話があるとすれば、それは先輩社員の後輩社員に対する「親切心」に基づいていると考えられます。

放置されている「性の二重基準」

多くの女性から見れば、ただ「恥ずかしいだけのエピソード」が、どうして「自慢話」になるのでしょうか。「性の二重基準」という視点から見ることで、この問題を適切に理解することができます。

性的な経験について、「男性は奔放であってもよいが、女性は貞淑でなければならない」というダブルスタンダードが存在しています。これが性の二重基準です。

有名人が不倫をした際に、女性側への罰が重く、男性側にそれほどダメージがないという事態がわかりやすい例だといえます。職場での男女平等の達成が大きな社会的課題として理解されているようでいながら、こうしたあからさまな女性差別が放置されているのです。

先ほど性の二重基準の定義を紹介しましたが、まだ十分ではありません。男性が奔放で、女性が貞淑ならば、男性が自由に性的な関係を結ぶ女性はいなくなってしまうからです。性の二重基準は「妻・恋人にふさわしい女性」と「妻・恋人にふさわしくない女性」を区別することで成立しています。そして、一部の男性は、「妻・恋人にふさわしくない女性」をモノ化して、まるで時計や車のようにコレクションします。

「素人童貞」という言葉があるように、「妻・恋人にふさわしい女性」を確保したうえで「妻・恋人にふさわしくない女性」との関係を持たなければ、一部の男性の仲間内ではバカにされます。その意味では、性的な経験の豊富さに価値を置くような男性の場合、「妻・恋人にふさわしい女性」さえもモノ化しているといえます。

以上のことから、性的な経験の量だけではなくさまざまなバリエーションのコレクションを所有していることが、コレクターとしての「能力の証明」であり、「自慢の種」になるのです。このタイプの男性は、童貞だけではなく、独身男性も見下し、自分のほうが有能だと考えている確率が高いと考えられます。

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