サントリー「セクハラ動画」炎上は防げたか 「失敗の本質」と「再発防止策」を考える
またひとつ、製品PR動画が炎上した。サントリーの新製品ビール「頂」をプロモーションするため、インターネット上で公開されたものである。批判を受け、すでに問題の動画は公開停止になっている。
話題になったので見た人もいるだろうが、まだの人のために改めて内容を紹介する。出張に行ったビジネスマンが外食していると、現地在住と思われる女性が話しかけてくる。食事中には肉料理を食べる場面で「肉汁いっぱい出ちゃった」、ビールを飲む場面で「コックゥ~ン!しちゃった」と話す。
「意図」の段階で女性の扱いがおかしかった
わずか30秒の動画だが、問題は多い。たとえば、出張先で美女が自ら近づいてくるという設定が男性にとって都合が良すぎること、女性の食事風景がアダルトビデオを連想させるものであったこと、などである。全体に女性を男性の性欲の対象として描いているといった批判がツイッターなどで噴出した。
女性の描き方が問題となり企業のCM動画が批判を受け「炎上」するのは珍しくない。ここ数年の女性関連の炎上事例には、ルミネ(商業施設)、旭化成ホームズ(住宅)、ムーニー(紙おむつ)などがある。今回、サントリーの件も「女性がお酒を飲んでいる描写」が問題とされた。そのため「女性を描くとたたかれるのか?」と勘違いする向きもあるかもしれない。
それは大きな誤解である。ルミネ、旭化成ホームズ、ムーニーに共通するのは「女性応援」のつもりで企画した製品・サービスだったのに、PRの「表現」で失敗したケースということだ。たとえばルミネは、働く女性が職場で直面する人間関係のもやもや、旭化成ホームズは女性の家事負担の重さと男性参加の可能性、ムーニーはワンオペ育児に苦労する新生児の母親……といった具合だ(旭化成ホームズには別の論点があるが、ここでは触れない)。
いずれも、近年、女性を取り巻く課題としてよく話題に上るものである。またそうした課題を、楽しい買い物、使いやすい住宅設計、性能の良い紙おむつで解決していく……という製品・サービスの企画趣旨とも合致している。だから、これら動画の問題はテーマそのものではなく、「女性の直面する困難の描き方」にあった。
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