5兆円売る「独身の日」に見る中国攻略の活路 日本企業が中国で成功するための戦略とは
8年前から始まった中国の「独身の日(今は双11―ダブルイレブン、W11と呼ばれる)セール」はようやく日本でも知られるようになった。毎年11月11日に向け、中国のネット通販最大手「アリババ」や2番手の京東(ジンドン、JD)を代表とするECプラットフォームは、大々的なキャンペーンを行う。その1日の取引額は一般人の想像を超える規模になる。
先週土曜日、W11の業界2強の実績は、アリババ1682億元(≒2.87兆円)、ジンドン1271億元(≒2.17兆円)であり、今年も記録を更新した。アリババのこの1日の取引額は、楽天の2016年1年間の取引額に匹敵する(楽天の2016年国内EC流通総額は3兆95億円で、主力の「楽天市場」に加え楽天トラベルなどを合算した金額)。
高まる日本企業の存在感
その中で、日本企業の存在感も少しずつ高まってきた。特に越境EC(日本の法人が在中中国人に販売する、国境を超えるEC)では、日本企業の健闘が目立つ。筆者が2015年に越境ECを研究し始めたとき、越境ECを知らない企業も多かった。取り組んでいても、中国ならではのPR方法に抵抗感がある企業も見受けられた。
今は積極的に受け入れ、実践している企業も増えてきた。たとえば、今年のW11前に、カネボウの化粧品ブランド、KATEシリーズは、渋谷のファッションビル「SHIBUYA 109」の大きな広告看板でW11を派手に宣伝し、「うわっ、日本企業は本当に中国市場を重視している!」と中国人のSNSで話題になった。
また、昨年「中国EC『祭り』の1日、光ったカルビーの戦略」(2016年12月10日配信)で紹介した越境ECビジネスに積極的に取り組むカルビーは今年、31万袋、1400万元(1元17円換算で約2.4億円)を売り上げ、アリババのシリアル部門で1位になった。カルビーは今年、フルグラの新生産拠点となる北海道の工場を稼働し、アリババを通じて初めて海外向けに販売を開始した。2016年度のフルグラの販売実績は291億円。中国では初の試みながら1日で2億円以上の売り上げとなったのだ。
巨大な中国の消費市場には全世界のトップ企業が進出し、競争が激しい。まるで、サッカーのワールドカップのような戦場になっている。日本企業に比べて欧米やその他の先進国は、巨大な広告費・宣伝費を投じ、はるかにアグレッシブに進出している。日本企業はそれには太刀打ちできない。しかしながら、現在のインバウンド(訪日客消費)と中国若者の消費動向を見ると、日本企業にはたくさんのチャンスがあるといえるだろう。
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