会社に閉じこもる大人は1ミリも成長しない 長時間労働の是正が育児との両立につながる

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女性の労働力が人口減少時代の日本にとって欠かせないものになっています。写真はイメージ(撮影:今井康一)  
前回の『「ワンオペ育児」を単なる流行語で片付けるな』(11月25日配信)に引き続き、『育児は仕事の役に立つ 「ワンオペ育児」から「チーム育児」へ』を執筆した、浜屋祐子氏と東京大学准教授の中原淳氏に加え、ライフネット生命保険の創業者である出口治明氏が、育児に励む親が働きやすい環境作りや長時間労働の是正に向けた課題について話し合いました。

 子連れ通勤可能なオフィスが増えていく?

浜屋:日本では、1人目の出産を機に退職する女性はまだ多いですが、正規の職員に絞ってみれば、就労を継続する人が増加するなど変化が見られます。また出産後も働き続けたいという意欲を持つ独身女性も増えています。さらには、一時的に仕事を中断していたが再び働きたい、最初はパートタイムでもいいけれど、いずれはもう一度フルタイムに近いかたちで働きたいという女性も多くいます。このような意欲を持つ女性たちに、今後チャンスはあるでしょうか。

出口:日本の歴史上、今ほど仕事に就きやすい時期はないと思います。有効求人倍率を見ると、数字上は完全就業状態ですから、仕事を選ばなければ、誰でも仕事に就けます。実際、都内のコンビニエンスストアで夜働いている人は、人が集まらないこともあり、ほとんど外国人ばかりになってきています。

中原:僕はアルバイト・パートの研究もやっているのですが、おっしゃるとおりだと思います。有効求人倍率も最高水準ですし、企業は本当にウェルカム、ウェルカムで何とか人を採りたいと思っています。ですが、そのことが、求職者側に確実には伝わっていないような気がします。

特に首都圏・大都市圏は、企業は「人を選ぶ」のではなく、「人に選ばれている」という認識を持って、採用を行わなければならない状況です。とりわけ、仕事を再開したいと考えている専業主婦の方々に対しては、このような状況が必ずしも伝わっていないのではないかという懸念を持っています。

出口:本当にそうですよね。先日、大阪で講演会をしていたときに、40代くらいの男性から「今の会社はどう考えてもブラックなので辞めたいが、40歳を超えた僕のような何も特技のない人間を雇ってくれるところがあるでしょうか?」という質問を受けたので、「悩むだけ時間の無駄。どこでもいいからとりあえず転職サイトに10社登録しなさい。そうしたらすぐに求人が来ますから、1つひとつ受けてみて悩むのはその後で十分です」とお答えしました。

中原:「自分は、仕事から少し遠ざかっていたから私に仕事なんて無理」といった求職者の方々の思い込みのようなものが「障壁」になって、就業につながっていないのだとしたら、望ましい事態ではないですね。

左から浜屋氏、出口氏、中原氏。話題は長時間労働の是正にまで及びます(撮影:今井康一)

出口:そうかもしれませんが、単に事情を知らないだけかもしれないですよね。中東などは、今、全人口に占める若年層の比率が高い「ユースバルジ」といわれる状態にあり、若者たちは仕事がなくて大変です。

一方、今の日本はユースバルジと真逆の状態です。しかも、この傾向は今後も加速し、2014年時点で6400万人いた労働人口は2030年には、800万人以上不足すると予測されています。労働者にとってこんなラッキーな国はないんですよ。

浜屋:逆に、経営者にとってみれば大変ですよね。職場環境や働き方の魅力度を高める努力を怠れば、優秀な人を採用するのが難しくなります。子育て中の人にも活躍してもらうためには、そうした方々が働きやすい環境を確保する必要があります。

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