都会の「低すぎるガード下」は、こんなにある もうじき撤去?品川―田町間だけでなかった

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東武伊勢崎線では、とうきょうスカイツリー駅―鐘ケ淵間が1961~1968(昭和36~43)年に都の事業で立体交差化されたが、その先、牛田駅を経て北千住駅までは、連続立体交差化事業の対象区間外となっている。

東武牛田―北千住間のガード上を東武の特急列車が駆け抜ける(筆者撮影)

そのため前述した牛田―北千住間の自転車・歩行者用ガードのほか、牛田駅の鐘ケ淵駅寄りには自動車も通るガードながら桁下1.7mというものも存在する。

池上線も、戸越銀座―旗の台間が1990(平成2)年までに連続立体交差化されたが、旗の台―蒲田間は対象区間外になっている。部分的に環七、第二京浜との立体交差がすでに行われていることによるのだろう。

満潮時に頭をぶつけないか?

地形と関連して超ユニークな低すぎるガードとして、JR総武本線越中島支線(亀戸駅付近から越中島貨物駅への貨物専用線)の砂村運河橋梁も触れておきたい。場所は江東区南砂1丁目、仙台堀川にかかる鉄橋である。ここはガード下の道が、なんと浮橋になっている。中が空洞の大きな鉄製の「浮き」のようなものを川に浮かべて、その上に人・自転車用の通路が設けられ鉄橋の下をくぐっている。桁下は1.8m弱といったところだろうか。

越中島貨物線のガード下。道路は浮島(筆者撮影)

初めて目の前にした瞬間、単純な疑問が浮かんだ。大雨などで川が増水すれば、浮きが持ち上がって桁下は低くなってしまうのではないか。または東京湾に近いので、満潮干潮に合わせて浮きが上下するのではないか。ここをよく通る地元の人も、増水時など油断していると頭をぶつけるのではないか。

だがここはゼロm地帯だということに気がついた。約1km離れている最寄りの地下鉄駅の東西線東陽町駅の出入り口には、「ここは海抜マイナス0.9m」とあった。海より低い所に仙台堀川などの水路がある。そのためこの一帯の水路は、荒川や旧江戸川などとの間に必ず水門があり、水流が遮断されている。水門がなければ、海から水路へ逆流してきてしまう。雨水や下水などはすべてポンプアップされて上記河川や東京湾へと流されている。外部水系と隔離されて水面の上下が少ないゼロm地帯だからこそ、鉄橋をくぐる桁下の低い浮橋が問題なくできたのだった。

こうした特徴のある背の低いガードは、不明なものもあったがその誕生には理由がある。いつなくなってもおかしくないものが多いので、注目しておきたい。

内田 宗治 フリーライター、地形散歩ライター

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うちだ むねはる / Muneharu Uchida

主な著書に、『地形と歴史で読み解く 鉄道と街道の深い関係 東京周辺』(実業之日本社)、『外国人が見た日本 「誤解」と「再発見」の観光150年史』(中公新書)、『関東大震災と鉄道』(新潮社)など多数。外国人の日本旅行、地震・津波・洪水と鉄道防災のジャンルでも活動中。

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