中国で「飲食店のドタキャン」が起きない理由

テクノロジーが「不信社会」を塗り替える

「逆に社会のルールをきちんと守っている人はもっと報われるようになり、いつか中国も健全な社会になっていく……。中国は日本のような民主主義ではないので、何かをやろうと思えば一気呵成にできる。私は最近、こういう“性悪説”を改めようとする中国の取り組みを肯定的に見ています」

飲食店では、決済まで事前に済ませてしまう

私は近著『なぜ中国人は財布を持たないのか』の中でも、不信社会がスマホによって変化しつつある事例を挙げているが、つい最近、新たに始めた中国人観光客に関する取材で、中国と日本の“性善説”“性悪説”に結び付けて考えられるような、おもしろい話を耳にした。

それは来日する中国人が利用する飲食店予約代行サイトの取材をしていたときだ。日本にある代行サイトの経営者によると、中国人は来日前に日本の飲食店に予約を入れるだけでなく、“決済まで事前に済ませてしまう”ケースが多いという。

中国の予約サイトでレストランの予約、注文、決済まですべて完了してしまえば、来日後、お店でちんぷんかんぷんな日本語のメニューを見て困ることがないし、日本で現金を持つ必要もなく安心だからだ。

支払いは代行サイトの運営者を通じ、日本の飲食店に日本円で支払われる仕組みが構築されている。代行サイトの経営者は、いわばアリペイと同じ役割を担っているというわけだ。この話を私は感心して聞いていたが、事前決済は中国国内では以前から主流であり、別に珍しいことではないという。

私も中国で飲食店を探すときに、中国版「食べログ」のようなサイト「大衆点評」をチェックすることがあるが、予約はたいてい地元に住む中国人の友人に頼んでやってもらっていた。そのため、中国では予約だけでなく、支払いまで事前に決済サービスで済ませてしまうこともできる、ということを知らなかった。

上海の友人に改めて聞いてみると、中国では予約してあっても、本当にお店に客がやってくるかどうかわからないし、お客といえども(中国では)簡単に信用できない。席や料理を確保しておいたお店にとって、もし来店されなかったら、大きなリスクになってしまう。客にとっても、電話で予約した場合、どんな従業員が電話に出るかわからず不安だし、ちゃんと予約が入っているか信用できない。

その点、スマホなら履歴が残って証拠になるうえ、決済機能を使って先払いしておけばお互いに心配がなくなる。不信社会、性悪説の中国だからこそ、双方がリスク回避できるいい仕組みなのだと聞いて、私はとても驚いた。

その中国式の仕組みを、今度は海を越えて、日本の飲食店の予約の際にも取り入れているというのだ。個人旅行をする中国人は日本の電話番号も持っていないし、言語の問題もあるので、日本の飲食店予約サイトから予約するのは難しい。そのため、それを代行するビジネスが立ち上がったのだが、この方法だと双方にとっていいことずくめなのだ。

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