「意識高い系」社員につけるクスリはない スクールカーストで下層にいた者の劣等感だ

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戦国時代、武将が地方から京都に攻め上って天下を取ろうとしたのになぞらえて、私はこうしたパターンの人々を「地方上洛組」と呼ぶ。彼らは周囲からの承認を得るための自己アピールがものすごい。

地方出身者で、「こんな(高級)ホテルに泊まっている」「(有名な)こんな人と会っている」「こんな異業種交流会に参加している」とSNSにやたらとアップする人は、意識高い系の「地方上洛組」だ。土地を移動して、青春時代の地味な人間関係や上下関係(スクールカースト)をリセットしようとするのが、このタイプである。

もう1つのパターンが「在地下剋上組」。大都市圏で生まれ育ち、親などから土地を相続したとしても、すべての人がリア充ではない。恵まれた環境で育っても、高校時代にスクールカーストの第二階級以下に属する人々がいる。

こうした人たちは、都会にいながらリア充を目指す。住んでいる場所を変えないまま、自分のステータスを上昇させようとするので、「在地下剋上組」と呼ぶ。

リア充は、大学に進学してメジャーなスポーツ系サークルに入部し、高校時代から継続して社交の中心になる。一方、「在地下克上組」は、大学内で注目されるメジャーなサークルには入部しない。どちらかといえばマイナーで、社会的な大義を掲げるサークルに活路を求める。

「在地下剋上組」は、高校時代にコンプレックスを感じていた支配階級たる第一階級に会いたくないので、政治や環境、地域などをテーマにしたサークルに入る。リア充にとって、現状は満ち足りて充足したよい社会なので、社会に対して疑問や問題意識を持っていない。そのため社会の改良を掲げた大義を持つマイナーサークルに入部することはない。

社会に関連する活動であれば、学外のさまざまな領域と接点を持つ。学外での活動が増加すれば、同じ地域や同じ大学にいる、リア充と接点を持たなくて済む。マスコミが好む大義を掲げているので、時として取材などを受ける。それまで地味で承認されない青春時代の悶々とした欲求が満たされていく。こうして意識高い系のプライドは満たされる。

「意識高い系」は大義で欲望を隠す

意識高い系の人たちは、高校時代まで冴えない存在だったので、周囲から承認されたいとの欲望が強い。しかし、意識高い系が非常にやっかいなのは、自分の欲望をストレートに表現しないことだ。

これまで承認されることが少なかったので、欲望をストレートに表現して他者から敬遠されることを恐れている。よって意識高い系は、社会的な大義で本来の欲望を隠す。

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