神田昌典「10年前のマーケ本が売れる理由」 日米で読み継がれる「究極のセールスレター」

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人を購買に向かわせるためのパターンは、不安と期待の両方を見事に操ることにある(写真:primagefactory / PIXTA)
1990年に初版が刊行され、米国で読み継がれている超定番書籍『THE ULTIMATE SALES LETTER』。著者のダン・ケネディは米国ダイレクトマーケティング界のレジェンド。日本版は2007年に『究極のセールスレター シンプルだけど、一生役に立つ!お客様の心をわしづかみにするためのバイブル』というタイトルで刊行されている。発売からすでに10年を経過しているにもかかわらず、某ネット書店では毎月200冊以上売れている。内容が陳腐化しやすいビジネス書の分野では、驚くべき数字だ。
『究極のセールスレター』の監訳者で、日本のダイレクトマーケティング界の第一人者である、神田昌典氏が「売れ続ける理由」を語る。

10年前のマーケ本が売れ続ける理由

『究極のセールスレター シンプルだけど、一生役に立つ!お客様の心をわしづかみにするためのバイブル』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

「この名著を、翻訳しようという日本の出版社、きっと現れないだろう……」

私は、そうあきらめていた。

『究極のセールスレター』(原著の初版は1990年発行)は、全米中のダイレクトマーケティングにかかわる専門家が必ずといってもいいほど、参考にする本である。にもかかわらず、なぜ「翻訳されない」と信じていたかといえば、あまりにも手間がかかり、その苦労が報われるとは思えないからである。

まず、この本の豊富な事例を翻訳する作業が甚大であること。そして事例が、米国の典型的な広告であるために、日本においては「使えない」という印象を読者に与えてしまいがちであること。

以上の理由で、本書も――ほかの優れた米国のマーケティング書と同じように――日本の読者に永久に届くことはないだろうと、私は考えていた。

ところが、10年前の2007年に日本版が刊行されるやいなや、重版され、今も某ネット書店では月200冊以上売れている。

この本のおかげで、ダイレクトマーケティングに興味をもっている日本の読者は、ほかの何十冊もの本を読む時間と苦労から解放されることになったことだろう。

本書の刊行以前であれば、もしあなたが、本格的にダイレクトマーケティングを学びたいなら、この分野のグルたち――ジェイ・エイブラハム、ジョセフ・シュガーマン、テッド・ニコラス、メルヴィン・パワーズ、ジョン・ケイプルズ、デイヴィッド・オグリヴィなどなど――の著書、あるいは彼らが発売する教材を片っ端から買い求め、英語で勉強するしかなかった。

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