「”できていないのに、できたと言う”のはウソつきだ」
米国人の同僚が、ある日本人マネジャーを名指しして、私にこう言った。
「彼はウソつきだ。できていないのに、できたと言う」
しかし、この日本人のマネジャーは部下思いで誠実。「武士に二言はない」とばかり、一度言ったことは少々のことでは撤回せず、自分の誇りにかけてでも全力でやり遂げようとする。英語は流暢だし、人望も厚かった。その彼が、なぜウソつき呼ばわりされたのか。
『100円のコーラを1000円で売る方法』シリーズ第2巻の終盤にヒントが書かれている。業界最大手バリューマックス社の内山明日香が、社長の東海林絵美に対して、ライバル駒沢商会に対抗して開発した新商品「経営の達人」の撤退・戦線縮小を提案する場面だ。この商品開発を指示したのは、ほかならぬ社長自身。自分のメンツを潰しかねない部下の提案に、東海林社長はこう答えた。
「なるほど、わかったわ。『経営の達人』は撤退、パートナー販売も徐々に比重を下げましょう。内山さん、お疲れ様だったわね」(第2巻180ページ)
東海林社長は自分の考えに固執せず、明日香の提案を潔く受け入れた。なぜ彼女は「経営の達人はどんなことがあっても育てていく。これは私の決定です。出直してきなさい」と言わなかったのか。自分が言い出して始めさせたことなのに、その主張を自ら引っ込めてしまったのでは、リーダー失格ではないのか。
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