「武士に二言はない」は嘘つきの始まり? 主張を変えるのは悪ではない

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マーケティング理論、競争戦略をストーリー仕立てでわかりやすく学べる50万部突破!の人気シリーズ完結編『100円のコーラを1000円で売る方法3』(永井孝尚、中経出版)。第3巻の舞台は外資系大手の参入で混乱する国内市場。グローバル時代の企業の生き残りがテーマである。
ここでは、日本アイ・ビー・エムに30年間勤務してきた筆者のビジネス経験を基に、本書では語られなかったグローバルコミュニケーションのエッセンスについて紹介する。

「”できていないのに、できたと言う”のはウソつきだ」

米国人の同僚が、ある日本人マネジャーを名指しして、私にこう言った。

「彼はウソつきだ。できていないのに、できたと言う」

しかし、この日本人のマネジャーは部下思いで誠実。「武士に二言はない」とばかり、一度言ったことは少々のことでは撤回せず、自分の誇りにかけてでも全力でやり遂げようとする。英語は流暢だし、人望も厚かった。その彼が、なぜウソつき呼ばわりされたのか。

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『100円のコーラを1000円で売る方法』シリーズ第2巻の終盤にヒントが書かれている。業界最大手バリューマックス社の内山明日香が、社長の東海林絵美に対して、ライバル駒沢商会に対抗して開発した新商品「経営の達人」の撤退・戦線縮小を提案する場面だ。この商品開発を指示したのは、ほかならぬ社長自身。自分のメンツを潰しかねない部下の提案に、東海林社長はこう答えた。

「なるほど、わかったわ。『経営の達人』は撤退、パートナー販売も徐々に比重を下げましょう。内山さん、お疲れ様だったわね」(第2巻180ページ)

東海林社長は自分の考えに固執せず、明日香の提案を潔く受け入れた。なぜ彼女は「経営の達人はどんなことがあっても育てていく。これは私の決定です。出直してきなさい」と言わなかったのか。自分が言い出して始めさせたことなのに、その主張を自ら引っ込めてしまったのでは、リーダー失格ではないのか。

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