「将来に興味がない」高校生に語るべき"言葉" 夢ばかり語っても意味がない

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この授業では「進路選択をこうすべき」と上から目線で教えることはしません。高校生たちにも本人なりの考えがあり、反発されてしまう可能性があるからです。それよりも、「現実を知ったうえで、どうするかを考えるのはあなたたち次第」というメッセージのほうがずっと効果的です。

たとえば、職業が「フリーター」、「月収100万円」のカードをひく生徒が必ず出るようにしたうえで、クラス全体に向けて次のような説明をします。

「フリーターで時給1000円の場合、寝ずに働いても月収100万円は不可能。アルバイトだとたくさん働けばたくさんおカネをもらえると思っている人もいるかもしれないけど、働ける時間には限りがあるよね」

高卒の場合、フルタイムの正社員よりも、夜勤などで長時間アルバイトをするほうが稼げることもあります。短期的な金銭だけを考えると、正社員が必ずしもいいとは限りませんが、労働時間についても知ってもらうことで、高校卒業後の進路を考えてもらうきっかけとしています。

生徒たちは、働き方の違いについてもあまり詳しくは知りません。そこで、先に紹介したようなカードを使用しながら、正社員、派遣社員、フリーターなどの違いを説明します。その際、どの働き方が良い悪いという言い方はせず、生徒自身が判断するための余白を残します。考える余地を与えることで、生徒に「将来を決めるのは君たち自身だよ」というメッセージを伝えているのです。

企業で働く「普通の大人」の情報こそ高校生たちに必要

仕事や働くことをイメージしにくい生徒たちであっても、具体例を示すと「こんな将来は嫌だ」「こんなふうだったらいい」という反応は示してくれます。たとえば、職業や月収などをカードで決めると「フリーター、月収15万、40歳、独身」というステータスになることがあります。そうすると、ほぼすべての生徒が「うわ、終わった」とか「マジ、無理」という発言をしながら、上記のような状態に否定的な反応を示します。

一方で「正社員、月収100万、32歳、子ども2人、マイホーム」というステータスになると、手元のカードを周囲の友達に見せびらかしたり、「俺、勝ち組だから」と喜びだしたり、うれしそうな反応を見せてくれます。将来のことをイメージはできなくても、どんな状況になるとうれしいのか、うれしくないのかの判断はつくのです。これだけでも生徒たちにとっては大きな前進です。

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