ドイツを悩ます難民積極受け入れのジレンマ 欧州では「反移民の風」が強まっている

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ハンブルクにある『シュピーゲル』のオフィスビル(筆者撮影)
中東やアフリカ大陸からの難民が欧州にどっと押し寄せた2015年、独アンゲル・メルケル首相は率先して門戸を開放し、現在までに100万人以上を受け入れてきた。しかし、この方針は政治的な「失策」とされ、先月のドイツの連邦議会(下院)選挙では与党勢力が大きな痛手を負い、排外的な政策を持つ「ドイツのための選択肢(AfD)」が初めて下院に足を踏み入れた。
オーストリアでも難民・移民の受け入れ厳格化を唱える国民党が第1党となったばかり。欧州各地で反移民感情のうねりが伝えられる中、ドイツ国民は今、難民の流入をどう受け止めているのだろうか。そもそも、いったいなぜ、これほど多くの難民を受け入れたのか。
ドイツのニュース週刊誌『シュピーゲル』の国内ニュースデスクで、難民・移民問題の専門家でもあるコーデュラ・マイヤー氏にハンブルク本社で話を聞いてみた。

「100万〜120万人の難民が流入」

――2015年以降、ドイツが受け入れた難民・移民の数は何人か。

コーデュラ・マイヤーさん(筆者撮影)

正確に答えるのは難しいが、2015年9月以降の1年間で約80万人が入ってきたといえる。これは当方のファクトチェック(=事実確認)チームの計算による(『シュピーゲル』は欧州のメディアで最大規模とされる、約70人の事実確認チームを抱えている)。後にドイツを出た人も入れると、現在までに100万~120万人ではないかと思う。

――80万人とすると、人口(約8000万人)の1%。欧州他国と比較するとずば抜けて大きい。たとえば、2016年の国別難民申請者数はドイツ(約72万)、フランス(約7万)、英国(約3万)(国際移住機関、欧州対外国境管理機構などの調査)になる。なぜこれほど多くの難民を受け入れたのか。

一言では答えにくいが、メルケル首相にとっては個人的に特別の思いがあった。

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