各駅停車「新幹線こだま」特急料金は妥当か 通過待ちばかり、所要時間長く本数も少ない

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ここで疑問に思うのはなぜ東京―新大阪間でひかりより1時間も遅いこだまの特急料金がひかりと同じなのかということだ。ひかりより約20分速いという理由で当初950円高く設定し、現在も310円高いのぞみの料金のことを考えると、こだまの特急料金はひかりよりかなり安くすべきと感じる消費者は多いだろう。

こだまに乗っているとやたらと停車時間が長い。各駅停車なのだから所要時間が長いのは当たり前だが、ひかりやのぞみの通過待ちが頻繁にあり、明らかにそれらの速達性の犠牲になり、所要時間が長くなっている。しかも冒頭で述べたようにのぞみ優先のダイヤとなり、こだましか利用できない区間での利便性はかなり劣る。

車内サービスでも劣る「こだま」

新幹線300系。速達タイプ「のぞみ」時代の幕開けとなった車両だ(撮影:今井康一)

さらに、より快適性が改善されている新型車の導入はまず、のぞみから導入され、こだまには「お古」があてがわれることも多いし、現在、こだまには車内販売はいっさいなく、車内に自動販売機もない。短距離客には不要ということかもしれないが、前述の熱海―新大阪間を例に取れば3時間近くかかる。こだまでも車内販売は必要なサービスなのではないか。途中駅で停車時間がたっぷりあるからホームに出て買えということか。

JR東海もこだまの割高感は認識しているのだろう。JR東海系の旅行会社・JR東海ツアーズは、通常料金の2~3割引でこだまに乗れる「ぷらっとこだま」を販売している。しかし、これは募集型企画旅行商品であり制限がかなり多い。販売は乗車日前日までであり、設定のない区間・列車もある。

現在の新幹線の特急料金は在来線の特急料金よりかなり高い。新幹線はかつて「夢の超特急」といわれたことを考えれば、「超特急料金」といってよい。しかし、現在のこだまの速達性はそれに見合っていないと筆者は感じる。

細川 幸一 日本女子大学元教授

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ほそかわ こういち / Koichi Hosokawa

専門は消費者政策、企業の社会的責任(CSR)。一橋大学博士(法学)。内閣府消費者委員会委員、埼玉県消費生活審議会会長代行、東京都消費生活対策審議会委員等を歴任。著書に『新版 大学生が知っておきたい 消費生活と法律』、『第2版 大学生が知っておきたい生活のなかの法律』(いずれも慶應義塾大学出版会)等がある。2021年に消費者保護活動の功績により内閣総理大臣表彰。歌舞伎を中心に観劇歴40年。自ら長唄三味線、沖縄三線をたしなむ。

 

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