ぽっちゃりタレントが続々と痩せ始めた理由 トレードマークのはずが割に合わなくなった

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そもそも、体重の多い芸能人が「ぽっちゃりタレント」として注目されるようになったのはごく最近のことだ。ザ・ドリフターズの高木ブー、「カレーライスは飲み物」という名言で知られるウガンダ・トラなど、太っていることを売りにして活躍しているタレントは存在していたのだが、それが「ぽっちゃりタレント」というジャンルのものとして意識されてはいなかった。

ぽっちゃりタレントが注目を集めるきっかけになったのは、2000年に始まった「debuya」(テレビ東京系)だろう。この番組では、石塚英彦とパパイヤ鈴木が大盛りメニューの食べ歩きロケなどを行い、太っている自分たちが明るく楽しく振る舞っている様子を見せていった。番組内で石塚が発した「まいうー」という言葉は流行語になった。

このあたりから、ぽっちゃりタレントというジャンルが世間でも意識されるようになり、自分が太っていることをあっけらかんと開き直るような彼らの芸風が確立していった。「debuya」をきっかけにして、ぽっちゃりタレントたちが勢力を拡大し始めた。

実は危険と隣り合わせ

大盛りのご飯をおいしそうに食べるぽっちゃりタレントの姿は、視聴者に幸福感をもたらす。ちょうど同じ時期に、早食い・大食いを得意とする一般人が「フードファイター」としてその実力を競い合う番組が話題になり、「大食いブーム」が起こった。食欲という人間の本能に根差しているグルメ番組の需要は衰えることがない。大食いブームにも後押しされて、ぽっちゃりタレントはその需要を一手に担うことになった。もともとはアイドルだった彦摩呂も現在ではグルメレポーターとして知られるようになっている。

ただ、そんなぽっちゃりタレントたちの活躍は大きなリスクと隣り合わせだった。過度の肥満は糖尿病、高血圧などの生活習慣病を引き起こす要因になる。健康をテーマにした番組では、芸能人を対象にした健康診断のような企画がしばしば行われる。ぽっちゃりタレントたちは、そこで「悪い見本」としての結果を求められているようなところがあった。

松村は、ある番組に出演したときに健康診断の結果が意外と良好だったことが判明して、番組スタッフから「何やってんだよ!」と不満を漏らされたこともあったという。

少子高齢化が進み、テレビの主な視聴者は高齢者になっている。高齢者にとって「健康」は身近な問題だ。視聴者の健康への意識がどんどん高まっていくにつれて、「肥満」は不健康や不摂生の象徴であるというネガティブなイメージが強まってきた。太っていることを売りにしてきたタレントにとっては、難しい時代になってきているということだ。

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