新型新幹線「見た目」が変わり映えしない理由 「N700S」は現行の「N700」とどう違う?

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まだ車体の中はがらんどうだ(撮影:尾形文繁)

N700Sの開発を行うJR東海・新幹線鉄道事業本部車両部の古屋政嗣・担当部長にこの疑問をぶつけてみたら、「塗装すれば、青いラインがN700Aよりも少し長くなる。これで見た目はかなり変わるはず」という答えが返ってきた。しかし、N700Sの塗装イメージを見るかぎり、N700Aとそれほどの違いはないように見える。先頭形状だけでなく、客席の窓の大きさもN700Aと同じだという。

先頭部分の形状は騒音や走行抵抗を低減するためであり、見た目を変えるためだけに形状を変えるわけにはいかないだろう。だとしたら、たとえば白地に青ではなく、赤い線に変えるだけでも、新しい列車だということが誰の目にもわかるのではないか。

こうした考え方について、社外からN700Sの開発に携わっているデザイナーの福田哲夫氏は反論する。「白地に青い線というのが東海道新幹線のイメージ。変えないことが利用者の安心感につながるのです」。

内装は「全席にコンセント」

ただ、JR東海と並ぶ、もう一方の新幹線の雄であるJR東日本は、バラエティに富む多種多様な新幹線を走らせている。東北新幹線は緑色のE5系、秋田新幹線は真っ赤なE6系。北陸新幹線は白地に銅色とブルーが印象的なE7系といった具合だ。また、同じ東北新幹線でも、現在主力のE5系と、かつて主力だった白地にブルーとピンクの線が入ったE2系では印象がまったく違う。

N700Sの客室モックアップ。一番左の座席は現行のN700のシート、後ろ2列がN700Sのシート。コンセント装備や新型のリクライニング機構に加え、色調もやや違う(撮影:尾形文繁)

外観だけでなく、内装も一見すると、現行のN700Aとは大きく変わっていないように見える。しかし、よく説明を聞いてみると、細部で大きく変わっている。普通車では全座席にコンセントが配置され、背もたれだけでなく座面も連動して傾くリクライニング機構が採用された。座席の色もブルーを基調とした色は変わらないものの、「全体のバランスを考えて見直しを行い、N700Aとは若干違う」と、車両部の担当者は説明する。

N700Aの空調は全体空調のほかに窓側の上部に乗客自身で調整可能な空調吹き出し口もあったが、これは全体吹き出し口に統一された。「個別の吹き出し口の利用状況を調べたところ、吹き出し口を閉じている乗客が多かったため」(同)という。

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