「上がり過ぎた米国株」の下落が始まる時 「選挙前は上昇」の日本株神話も今回は微妙
さて、過去の総選挙の前は、ほとんどの場合で株価が上昇したので、「
今回も上昇だ」、と言われている。本当だろうか。拙著『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)では、様々な「俗説」の検証が満載で、もちろん、選挙と株価の関係も調べている。2014年までの過去15回の衆議院総選挙を取り上げ、投票日1カ月前から投票日直前の金曜日までの日経平均株価の騰落を調べると、15回中、上昇が13回、下落が2回で上昇が圧倒的だ(いつからいつまでの期間の株価騰落率を測るかなどによって、結果は若干異なってくるが、上昇が圧倒的なのは変わらない)。そのため、今回も選挙前は株価が上昇するだろう、と言いたくなる気持ちはよくわかる。
株価は選挙前「13勝2敗」も、今回は下落時に類似
これまで選挙前に株価が上昇した背景としては、通常は選挙の争点があり、そうしたポイントを巡って新しい経済政策が打ち出される、という期待があったのだろう。あるいは、総選挙が政権交代をもたらすと見込まれた場合、新政権がまっさらなところから、新たな景気対策を行なう、との見込みが広がったこともあっただろう。
一方で、2回の下落局面をみると、まず1回目は1980年6月だ。この頃は、自民党内部での抗争が激しく、野党も「可決まではしないだろう」と高をくくって提出した内閣不信任案が、自民党から多数の欠席者が出たため、賛成多数となってしまった。これに対して当時の大平正芳首相が衆議院を解散した、という展開だった(いわゆる「ハプニング解散」)。解散の経緯や、その前の選挙が1979年10月で余り間が空いていなかったことなどから、選挙を行う必要性が感じられず、そのため経済政策などが打ち出されるといった期待も薄かったのだろう。
2回目は2014年12月だ。この時は安倍政権が、消費税引き上げを延期するとの方針を打ち出し、その是非を国民に問うためとして、解散総選挙を行った。しかし国民としては、そんなことは、選挙という形で尋ねなくても、延期してほしいのは自明だろう、と思われ、やはり選挙の必要性が感じにくかったのではないだろうか。
今回も、外から見ていれば、安倍首相の解散の判断は、今選挙をやった方が、自公が獲得できる議席数が「まし」だから、という理由だけに見える。選挙前も選挙後も、良くも悪くも、特に安倍政権の経済政策が変わるとは予想しがたい。この点から、今回の選挙は、1980年、2014年に似ているように考えられる。
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