金正恩の「狂人っぷり」は一体どこまで本物か

実は挑発が一線を越えないようにしている?

KCNAが9月22日に提供した金正恩労働党委員長の近影(写真:ロイター)
挑発が一線を越えないようにしているのは正常者の証しだ。国際社会の圧力にもかかわらず、北朝鮮が核・ミサイル開発をやめない理由は――。パックン(パトリック・ハーラン)がちょっとマジメな話をする。

 

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら

Madman Theory(狂人理論)。自分の正気を疑わせて、相手から有利な条件を引き出すというこの外交上の交渉術を、近年よく耳にする。まともな人間が狂人を演じるのは楽な作業じゃないはずだが、ある国のトップは現在うまくやっていると思う。しかも一番巧みにやっているのは恐らく、みんなが思い浮かべるであろう「あの人」ではない。

ソ連側はその狂人っぷりにビビった

「I call it the Madman Theory, Bob」。こう切り出して狂人理論の作戦について説明を始めたのは、ベトナム戦争を終わらせることができなくて苦悩していたリチャード・ニクソン米大統領。彼は、ハリー・ハルデマン首席補佐官にこう伝えた。

「私は戦争をやめるためには手段を問わないと、北ベトナムに思わせよう。彼らにこう漏らすんだ。『頼むよ。ニクソンは反共産主義に狂っている。彼が怒ると誰にも止められないし、核のボタンを持っているぞ……』。そうすれば2日以内に、ホー・チ・ミン(北ベトナムの指導者)が自らパリに停戦を乞いにくるだろう」

ニクソンは冷戦中のソ連に対しても、怒り狂った様子で大使を罵倒したり、核爆弾搭載の爆撃機をソ連の国境付近で旋回させたりと、まさに発狂したかのような言動をみせた。ソ連側はその狂人っぷりにビビり、核軍縮条約の交渉テーブルに着いたと評価する歴史家もいる。

それから40年余り。ドナルド・トランプ大統領は選挙期間中から、日韓の核保有化を示唆したり、アメリカのNATO脱退をほのめかしたりと国際社会の基礎構造をひっくり返すような、常人には理解しがたい発言を展開した。就任後もメキシコ、ドイツ、オーストラリアなどの同盟国を怒らせながら、トルコのエルドアン大統領、エジプトのシシ大統領、ロシアのプーチン大統領を擁護し、北朝鮮の金正恩・国務委員長に「会えたら光栄です」と狂言めいたことを言っている。

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