いま必要なのは夢追い型の「政治家」 「政治屋」を生み出す選挙民の意識改革こそ必要

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政治屋と政治家の違いは何か。半径5メートル、つまり自分と周囲の利害のために動くのが政治屋、歴史をつくる仕事をするのが政治家といわれる。

「政治リーダーの評価は『歴史に使われた指導者』かどうかで決まる」という言葉もある。古今東西、時代の要求に応える政治を果敢に実行し、歴史的役割を果たしたとき、リーダーは高い評価を得る。

歴史をつくるという高い志、時代の要求に応えるための鋭敏な感覚と強靭な精神を備えた政治リーダーは、目指す目標をわが生涯でいかに達成するかと考える。人には寿命があり、人生は一度だから、当然といえば当然だ。同時代を生きる人々は平和、安全、豊かさ、快適さなどを求めている。それを実現するのが政治家の責務であるのは間違いない。

だが、長く政治の世界をウォッチしてきて、思うことがある。
それだけでなく、「今」を超えて、次代を見通し、未来を生み出すという発想のリーダーが現れないのか、と。

半世紀後とは言わない。せめて10年後、20年後を見据えて、未来図を構想し、実現を目指して今日を生きるというタイプの政治家がほしい。歴史をたどると、達成目標を自己完結的に自分の人生だけで考えずに、長期的展望に立って世界と日本の将来を考察し、未完に終わるリスクを承知で、描く未来像の実現に挑戦した先人たちをときどき発見する。

そんな夢追い型の政治家は、現実政治を動かすパワーがないから何も生み出せないという批判がつきまとう。選挙民は現世利益追求の意識が強いから、選挙で物事を決める民主政治では、自分の人生を超えて未来を発想する政治リーダーは生まれにくいという見方も根強い。

長期的展望に立つ政治家が少ないのは現行の衆議院の小選挙区・比例代表並立制の選挙制度が原因、と説く人もいる。だったら、われわれ有権者がその気になって、人生を超えて未来を考える本物の新型リーダーを輩出しようではないか。
民主政治を蘇生させ、現在の「夢なき閉塞社会」を打ち破るには、まず選挙民の意識改革が必要だが。

(撮影:尾形文繁)

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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