「景気刺激で消費拡大」は線香花火にすぎない これまでの20年で家計の姿はどう変わったか

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(再掲しています)

利子や配当などの財産所得は48.8兆円から27.9兆円へと大きく減少しており、この主因は預貯金から得られる利子が金利の低下によって27.4兆円から5.4兆円へと大幅に減少したことだ。

金融緩和政策は、利払い負担を軽減して誰もがプラスの恩恵を受けるかのようにいわれることがあるが、利払い負担の軽減は利子所得を得ていた人の所得の減少によって可能になる。このため、借り入れの多い企業部門や政府部門は金融緩和で大きな恩恵を受けているが、その分だけ預貯金からの利子所得が減少し家計所得が減っている。

「利払い軽減」より「利子受け取り減少」が響く

家計部門の支出側を見ると、金利の低下によって住宅ローンの利子が減少したことや、個人企業の借入金に対してかかる利子負担が大幅に軽減されたことから、財産所得(支払い)は13.7兆円から2.9兆円に減少している。だが、住宅ローンなどの利払い負担の軽減効果を、保有している預貯金から得られる利子の減少が大きく上回っている。金利負担の低下で企業収益が押し上げられたため、配当は1.3兆円から8.5兆円に増えたものの、利子の受け払いの収支が、14.1兆円のプラスから2.7兆円のプラスに縮小した影響が大きく、財産所得全体の収支でも35.1兆円のプラスから25.0兆円のプラスへと10.1兆円の減少となっている。

金利の低下によって株価や地価が上昇して家計の資産が増加したので家計も大きな利益を得たはずだという見方もあるだろう。議論が長くなるのでここでは詳しく説明しないが、金利の低下による資産価格の上昇は、将来の所得を早めに認識しているという会計上の話であって、将来発生する所得を先取りしてしまい所得の増加速度を低下させることになると考えられる。(興味のある方は拙著『日本経済の呪縛~日本を惑わす金融資産という幻想』東洋経済新報社刊を参照されたい)

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