中国版ツイッター、ウェイボーの危機 中国で動き出す「ウェブ整風運動」

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中国の歌手の呉虹飛が「微博」での軽率な発言がもとで逮捕された問題は、中国における微博全盛時代の終焉の危機を実感させるものだった。

呉虹飛は7月20日、自らの微博で「北京人材交流中心の居委会と住建委を爆破したい」と書いた。日本語で爆破というと穏やかではないが、中国語の文字は「想炸」。訳してみれば「ちょっとやっつけたい」のようなニュアンスで、一種の不満の表現として若者たちがよく使っている程度である。よくある飛行機や列車への脅迫のいたずらではなく、呉虹飛にとっては完全な冗談だった。

ところが22日、呉虹飛の自宅は公安に踏み込まれ、本人も「デマ情報によって公共の安全を脅かした」などの罪状で拘束された。10日後に刑事処分から行政処分に切り替えられ、500元の罰金で釈放されたが、中国のユーザーたちに「微博ではおちおち冗談すら言えない時代になった」と強く印象づけた。中国語には見せしめという意味で「鶏を殺して猿に見せる」ということわざがあるが、呉虹飛事件によって中国政府は本腰を入れて微博上のデマを取り締まる姿勢を示したのである。

大物への警告

8月に入ると、呉虹飛と同じく、デマの流布の容疑で逮捕される事件が相次いだ。たとえば、ウェブ上で故意にデマを捏造・流布して他人の名誉を毀損し、不当に利益を得たとして、秦志暉容疑者(ハンドルネーム「秦火火」)や楊秀宇容疑者(ハンドルネーム「立二拆四」)が逮捕されたが、この2人は微博で数十万人のフォロワーを持っているウェブ界での有名人だった。注目を集めてビジネスにつなげるために、かなりいい加減なことを書いていたのは確かで、何度も微博の運営会社からアカウントの一時停止などの措置を受けてきたが、突然の逮捕に関係者は「整風」運動とのかかわりを想像させた。

また、「微博」のユーザーがある日突然、アカウントを無効にされる事態も相次ぐ。その中でも「大V(大物)」と呼ばれる、10万人以上のフォロワーを持つ人物には、微博運営会社などから直接、間接的に当局の意向が警告として伝えられていると聞く。 こうした一連の措置は、習近平指導部の方針とみて間違いないだろう。

8月に行われた共産党の全国宣伝思想工作会議で、習近平は「マルクス主義のイデオロギーにおける指導的地位を固めなくてはならない」「原則問題や政治問題について、(当局は)積極的に主導権を掌握し、民衆や幹部たちに限度を知らせるべきだ」などと語り、全面的にウェブ上での言論規制に乗り出すよう指示を発したと伝えられる。

以来、人民日報などの官製メディアはこれに呼応した文章を掲載し、今回の動きが単なる警告にとどまらず、「整風」と呼べる高いレベルの運動であることを示唆している。

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