患者想いの医者ほど生きづらい 患者を救うことだけが”いい医師”ではない

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すべては患者のために!!

このように、“患者への思いが人一倍強く”、現在の病院の体制に不満を持っている医師というのは整形外科や脳神経外科を中心に外科系で多くいます。

内科系であれば、ひとりの医師の診療である程度完結しますが、手術がからむ診療科は、術前から手術までの管理、手術後のリハビリ、退院や転院までのフォローといった一連の流れにおいて多くのスタッフが絡んで、患者を診ていくことになります。自分ひとりでは管理できない分、周りのスタッフはもちろん病院の管理体制なども、その患者の扱いに大きくかかわってくるわけです。

現在、病院の機能というのは、急性期、回復期(リハビリ)、療養など患者の様態に応じて分化が進んでいます。患者のステージにおいて診療内容が違い、そこに携わるスタッフも変わります。ただ患者の主治医である医師はその患者の容体には一定の責任を持ち、手術が終わってからのフォローも行っていかなければならない。患者への思いが強い先生ほど、そのプロセスは非常に気になります。ほかの医師やスタッフも協力して診てくれているとしても、そのシステムについて何かおかしいことがあれば、病院側に意見を言いたいという気持ちを持っているのもうなずける話です。

西山医師と初めて会ったのは数年前です。メールや電話でのやり取りはスムーズで、コミュニケーション力もある医師だと思っておりましたが、実際に会うと眼光はするどく医療業界に向けては一家言がありそうな感じでした。あいさつが終わり、彼のこれまでの経験や実績をひととおり聞いた後は、病院の体制についての不満から始まり、彼の思いやこれからやりたいことが怒濤のように出てきました。

彼のこれまでの経験についてはとてもすばらしく、研修施設でひととおりのことは学び終えたが、学びきれていない(どれだけ大きな研修病院も得意の分野、不得意の分野があり、手術のバリエーションもすべて網羅できるわけではない)ところについては、その症例数が多い病院に手弁当で(毎回特急で3時間ほどかけ)週1回通って診察をしていたようです。とにかく医療についてはとことんマジメで、
「患者さんが求める医療をするために、医師として一人前になる」

そういった強い決意の下、これまで研鑚を積んできたわけです。

それゆえ、普通は10年くらい経験があると、どんな診療科においても一人前の医師に見られますが、彼はまだ自分には足りていないところがあるということで、プラス4年ほどかけて十分な経験と実績を積みました。私もそれを聞いたときにプロフェッショナリズムが高く、本当にすごい医師だなと思いました。

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