外食産業のブラック労働が話題になった久しい。特に某居酒屋チェーン店は、トップが選挙などで目立つせいか、各種のメディアでたたかれやすい。私も駅前でビラ配りをしているオネーちゃんなどを見るにつけ、「この人社員?休みちゃんともらえているのかな? ビラ配りはサービス残業かぁ?」などと余計な心配をしてしまう。
この夏の参院選でも「ブラック企業対策」は重要課題として、各党はいろいろな公約を発表していた。だからといって、「ワタミの店員がかわいそうだから、隣の行列のできるラーメン店の大将の儲けを回せば一件落着」やら「同じ調理師なのに給料差があるのはおかしい!」と主張する人はいない。
いや……。過去に1度だけ似たような主張を聞いたことがある。ちなみにプレゼンの担当者は、東大法およびハーバード院卒なのだそうな。
2011年、民主党政権の超人気イベントだった「事業仕分け 第2弾」のことだった。「医療崩壊を防ぐには、医療費増額が必要」といった趣旨の分科会で、財務省出身の代議士はドヤ顔で「確かに産科や救急の勤務医は大変だが、開業医はそうでもない。また、開業医の収入は勤務医の約1.7倍ある。同じ医者なのに、こんなに給料が違うのはおかしい。だから、開業医の儲けを勤務医に廻せば、医療費の総額を上げずとも医療崩壊は防げる」とプレゼンし、仕分け人は「来年度の診療報酬総額を据え置くべき」との結論に至った。
今の私は確信している。「ワーキングプア勤務医の敵は開業医ではない。勤務医組織に寄生する、ノンワーキング常勤職員である」のだと。「ブラック労働の勤務医を救うには、開業医の儲けを回せば一件落着」とは「ワタミの店員を救うには、水だけで800円とる人気シェフの儲けを回せば一件落着」レベルの暴論だと思っている。
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