東大野球部が「4対3」での勝利を目指す理由 勝利の方程式、それは「頭脳プレー」ではない
甲子園に棲むという魔物は、大学野球の聖地・神宮球場にも棲んでいる。魔物は東京六大学リーグで東大が試合終盤まで接戦を演じているときに顔を出す。神宮球場は東大が勝つのではないかという期待感と、東大に負けるわけにはいかないという危機感につつまれる。
戦力では圧倒的に勝るはずのリーグ内の他校の選手たちは「東大相手に接戦になると、スタンドがざわつくので戦いにくい」と口を揃える。東大を率いる浜田一志監督は「お互いが100%の力を出し合ったら勝てない。接戦に持ち込んで相手に『このままではヤバい』と思わせれば、ミスを誘い、勝機が訪れる」と言う。
「あわや」と思わせないと、相手のミスは誘えない
東大は2015年春の法大1回戦に勝って連敗を94で止めると、同秋も1勝。2016年春には12年ぶりにシーズン3勝すると、同秋も1勝。今春のリーグ戦では白星を手にすることはできなかったものの、「シーズン1勝」には何の驚きもなくなった。彼らの現在の目標は「1勝」ではない。勝ち点奪取と最下位脱出である。
2012年11月、当時46連敗中だった東大の監督に就任した浜田監督は、いかにしてチームを勝利に導いたのか。指揮官は、戦力差が大きいリーグ内の他大学に勝つための前提として「体力」を挙げる。
「例えば打撃なら、東大の打者が芯でとらえても打球が外野の頭を越えないようでは、相手投手もコントロールをミスしません。人がミスをするのは『ひょっとしたら』という気持ちがあるとき。ミスを誘うには『コースを間違えたら持っていかれる』と相手に思わせるだけのパワーをつけなければなりません」
現在、東大の選手たちは個人別に目標体重を決め、「1日に白いご飯を何グラム食べる」など食事の量を管理しながら、ウエイトトレーニングなどで体を作っている。
指揮官が次に挙げるのが「基本技術の習得」だ。塾の経営者でもある浜田監督は、こう説明する。「東大の入試問題も教科書から作られる。教科書をきっちりおさえていれば、ある程度の点は取れるものです。野球でもそれは同じですよ」。
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