野村克也が語る、「弱者」こそ最後に勝つ理由

「コミュ力」の前に何を身につけるべきなのか

「私は自らのことを『弱者』だと思っている。そして『弱者』こそ最後に勝つ」と説く野村克也さん(写真:日刊スポーツ/アフロ)
早くも折り返しを迎えている今シーズンのプロ野球。厳しくも温かみのあるコメントで知られる野球評論家の野村克也さんは、選手時代に本塁打王を9回、打点王を7回獲得し、球史に大きな足跡を残す名選手。監督としてもヤクルトスワローズを3度の日本一に導いた名将です。輝かしいキャリアを誇る野村さんですが、プロ入り当初はまったくの無名。1954年に南海ホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)に入団した時は契約金ゼロのテスト生でした。
なぜ、野村さんは名選手として名を残し、一方で華々しくプロ入りした選手たちでも数年で引退する事態になるのでしょうか。その理由は「弱者になれなかったから」だと著書『弱者の流儀 野村克也31の考え』で説く野村さん。野球に限らず、どの世界の「プロフェッショナル」にも役立つ心構えを明かします。

 

プロ野球に入るような選手たちは、何かしら「いいもの」を持っている。だからドラフトで指名される。逆に言えば、最初から「長所」を高く評価されてプロ入りしているため、謙虚さを失ってしまう。そこで達成感に浸ってしまう。 

正直、気持ちはわからないでもない。皆小さい頃からプロ野球選手になりたいと思って生きてきて、夢をかなえるわけだから。でも、プロ入りは社会人としてゴールではなく、出発点。そこで酒や遊びを覚えてうつつを抜かしていては、一流選手の仲間入りをすることなど絶対にできない。

どんな仕事であっても、プロの世界に飛び込んだその時は「あこがれの職業に就けた」「目標をかなえた」という喜びでいっぱいになるだろう。でも、そこがスタート地点であることは忘れてはいけない。「プロになれた自分はすごい」などと過信してしまえば、未来は開けない。妥協したり満足したりすることは禁物なのだ。

そのためにどうすればいいのか。

己を「過信」しないための方法論

いつの時でも自分は弱者であり、欠点を直さなければいけないという謙虚な意識を持ち続けることが大切だ。己を過信すれば、どうしたって自分に甘くなる。

人間は自己中心的な生き物だから、自分に対して厳しくするのは難しい。これくらいやったからいいだろう、こんなものだろう。そう思って満足してしまう。でも、そんな満足は何にもならないのだ。

そういう意味でも、自分自身の欠点を意識することは大切だ。過信しがちな自分を戒めることにもつながるし、弱者であることを再認識して謙虚に妥協せずに取り組むことを思い出させてくれる。自分を強いと思い込んでいたら、必ずどこかで満足や妥協が生まれ、成長を止めることになる。でも、弱者ならそうはならない。だからこそ、私は弱者であることこそが強さだと思っているのだ。

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