民進党・前原新代表は、のっけからつまずいた 「山尾幹事長」の撤回で求心力さらに低下

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山尾氏の代わりに幹事長に就任した大島氏は60歳、当選6回のベテラン議員で党運営の経験も豊富だ。ただ、縁の下の力持ちに徹してきたことから政界での知名度は低く、山尾氏のような華やかさにも欠ける。野党第1党の幹事長は「党の顔」として大向こうをうならせるような言動で政権追及の先頭に立つのが使命ともいえるだけに、「大島氏ではいかにも地味すぎる」(若手)との不満も広がる。

現在の民進党の立場は「長期低迷からいかに脱却するかが問われている。人事で党内事情を優先しているような場合ではない」(長老)だけに、党内からは「リーダーはいったん決めたことは押し通すべきだった」(若手)との前原代表への批判も相次ぐ。とても挙党一致とはいえない新執行部のスタートだけに、前原氏の指導力に疑問符が付いただけでなく、民進党の前途の危うさも浮き彫りにする執行部人事となった。

鬼門の幹事長人事、統率力不足も露呈

民進党にとって幹事長人事は鬼門ともいえる。

昨年9月の代表選で圧勝した蓮舫前代表は、民主党政権崩壊時の首相だった野田佳彦氏を幹事長に起用したことが、党内での蓮舫体制への不信感を拡大させたとみられている。しかも、今年7月の東京都議選敗北後の代表辞任劇では、蓮舫氏をかばうために野田氏が幹事長辞任を決断したのに、誰も後任幹事長を引き受けようとしなかったことが蓮舫氏を代表辞任に追い込んだ。蓮舫氏は辞任会見で「強い党を新たな執行部に率いてもらうのが最善の策だ。統率する力が私には不足していた」と語ったが、今回の幹事長人事での迷走はまさに前原氏の統率力不足の結果でもある。

8月3日の内閣改造・自民党役員人事で政権運営の立て直しを図った首相は麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官、二階俊博党幹事長という「政権の骨格」は変えなかった。人材豊富な自民党でも「骨格維持が安定政権の要諦」(自民長老)とされる。これに比べ今回の前原氏の幹事長人事は「骨格の重要さ」よりもイメージアップなど大向こう受けを狙い、党内の反発を受けて撤回を余儀なくされた。これは「党の結束か、政治路線の統一か、それとも選挙目当てか、という明確な方針がないままの人選」(首相経験者)だったことが原因ともみえる。

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