築地市場再開発は「時間切れ」になりかねない このままでは「都の守旧派役人」の思うつぼ

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小池百合子東京都知事は「築地市場の豊洲移転は、来年夏以降に」と言うが、今のままだと豊洲移転も築地再開発も進みそうにない。何が障害になっているのか(撮影:尾形文繁)
「築地市場は本当に守れるのか――」。東京都の小池百合子知事が「築地は守る、豊洲は生かす」として、築地市場の豊洲市場への移転と、築地再開発案(市場機能を維持しつつ食のテーマパークなどを建設)を発表したのは6月22日。直後の7月2日に行われた都議会議員選挙では、小池氏が代表を務めていた「都民ファーストの会」(現在は野田数代表)が大勝。これで市場移転問題はようやく進むかと思われた。
だが、現実はそうではない。豊洲市場への移転は、追加安全対策の完了が見込まれる来年夏以降になる見通しだが、それ以上に重要な築地再開発について、小池都知事は都議会臨時会で「5年以内のできるだけ早い着工を目指す」としたものの、暗礁に乗り上げかけている。なぜだろうか。日本の食文化を守るカギを握る、肝心の仲卸業者がまとまらないからだ。「築地が守れなければ、日本の食文化が崩壊する」と危機感を抱く竹内昌義東北芸術工科大学教授(小池都知事が特命で設置した「市場問題プロジェクトチーム(PT)」のメンバー)と投資銀行家のぐっちーさん(山口正洋氏)が「築地・豊洲問題の正しい解決法」を話し合う。

なぜ築地市場の「仲卸機能」を残すのが重要なのか

山口:築地市場の豊洲移転と再開発については、都議会議員選挙で「都民ファーストの会」が大勝したので、これで前に進むかなと思ったのですが、どうもそうではないようですね。

竹内:そうなんです。まず、全体の構図を説明すると、6月22日に小池都知事が発表したことは、大まかにいえば3つあります。1.「築地市場は5年後を目途に再開発する」2.「豊洲市場は、冷凍冷蔵・物流・加工等機能を強化し、将来にわたる総合物流拠点にする」3.「築地の再開発や豊洲市場利用の具体案については、オープンな場を設けて、事業者だけでなく都民にも広く情報公開しながら検討する」というものです。

山口:都には市場移転問題を扱う機関として、竹内さんも委員を務める、専門家メンバーの「市場問題プロジェクトチーム(PT)」と、都の役人たちからなる「市場のあり方戦略本部」がありますね。PTは、当初は豊洲移転を中止し、築地を再開発することを提言。一方、戦略本部は都の従来の方針である「築地は廃止、豊洲へ移転」を譲らず、意見は真っ向から対立していた。

竹内:そうです。そこでわれわれPTは、「築地で営業を続けながら少しずつ再開発していくプラン」「いったん豊洲に移転し、比較的短期間で築地を再開発するプラン」の2つを提案していました。

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