小池都知事の「豊洲延期」は巨額損害を招いた 豊洲移転だけじゃない、五輪の遅れも深刻だ

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築地市場内で工事が止まっている環状2号線。果たして東京五輪前に開通できるのか(筆者撮影)
本記事はジャーナリストの有本香氏がまとめた『「小池劇場」が日本を滅ぼす』(幻冬舎、6月9日発売)からの抜粋です。

 

小池百合子氏が東京都知事に就任してまもない平成28(2016)年8月末のことだ。彼女は2カ月先に迫っていた築地から豊洲への市場の移転という大事業をまさに「鶴の一声」で、議会に諮ることもなく、延期すると独断した。

ことが動き出してから、約20年。その間の知事、とくに石原慎太郎氏、舛添要一氏と、多くの都庁の職員、専門家、豊洲市場建設に関わった日建設計や建設会社の人々、そして築地市場のなかで仲間内の政争に心を痛めながら、業者をまとめ、移転の準備を進めてきた人たち、さらには市場移転とリンクする東京五輪の準備、東京の再開発を進めてきた人たちの苦労が積み重なった大事業を、小池都知事は一瞬でぶち壊したのだ。

「都政はブラックボックス」はおかしい

女性初の都知事ということもあり、私も当初は小池百合子という政治家に対し、大いに期待していた。だが、決定的な不信感を抱いたのはこの時だ。

小池都知事は、都知事選挙の最中から最近まで、「都政はブラックボックス。いつ、どこで、誰が何を決めているかわからない」と繰り返し言っている。だが、これはおかしい。

私たち市井の一都民でも、都庁の公開資料や都議会の議事録はかなりのところまで閲覧でき、都政のさまざまな事柄が、いつ、どの場で、誰によって決められたかはほぼわかる。最高権力者の都知事ともなれば、一般に非公開の資料も閲覧可能だから、誰が決めたかわからないはずはない。

一方、都政史上、きわめて異例なことだが、小池都知事は、20年近くかけて進められてきた卸売市場移転という大事業を、1人で「延期する」と決めたのだ。彼女流にいえば、「私が決めた。わかりやすいでしょ」ということだろうが、ならば、これにより生じた巨額の損害は小池1人が負うべきである。

豊洲市場への移転延期により、目下、市場会計から毎日、数千万円がドブに捨てられている。この10カ月間の損害のうち、数字の出ている市場のケースを見てみよう。

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