東京五輪、「経済効果」の発揮は簡単ではない 長野五輪はじめ、失敗例には事欠かない事実

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そして、最後の"刈り取り"は「帰国後ビジネス」だ。「日本で得た思い出の追体験」がキーワードになるだろう。

国内向け商品にも海外展開の可能性

たとえば、日本で抹茶をたてる体験をした訪日外国人は、五輪後にはコーヒーメーカーならぬ、「抹茶メーカー」の購買意欲が増すかもしれない。これまで茶道に親しんだ国内シニア層向けだった商品が、「日本で得た思い出の追体験」を目的に、意外にも訪日外国人に大ヒットする可能性だってあるのだ。これをラッキーパンチではなく、「狙って仕掛けて当てる」のが重要だ。

このように、アリ型思考に基づき「種まき→育成→刈り取り」というステップをしっかり踏めば、時間は掛かっても、五輪を成長機会として確実に生かすことができる。

2020年まで、あと3年。企業の中期ビジョンや、それを達成するための戦略はまだ変えられる。目先の3年ではなく、5年先、10年先を見据えて、2020東京五輪をどう活用するかこそが、大切なことだ。

先に紹介したアリ型思考に基づいた戦略は、あくまで一例だ。大切なのは、五輪という目先の甘い果実に惑わされず、長期的な発展をするために舵を切ることである。

五輪を「点」で見るのではなく、「線」で見てみる。そうすることで、既存ビジネスの中にも、たくさんの選択肢や可能性が広がっていくはずだ。

そうするためにも、2020東京五輪に向けて、まずは政治や社会、そして経済やテクノロジーに起きている足元の変化をできるだけ正確にとらえる必要がある。そして、そこを基点にして、五輪後にはどのような日本になっているのかを推察していくのが、次に進むべきステップになる。

田中 大貴 M&A戦略コンサルタント、MAVIS PARTNERS 代表取締役

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たなか だいき / Daiki Tanaka

早稲田大学商学部卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社、その後、ジェネックスパートナーズ、マーバルパートナーズ(現PwCアドバイザリーのDeals Strategy部門)、ベイカレント・コンサルティングのM&A Strategy部門長を経て現職。一般社団法人ポストM&A研究会 代表理事、グロービス経営大学院にてファイナンス講師も務める。

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