韓国の若者たちが「レクサス」を欲しがる背景 シニア世代とは異なる価値観が広がっている

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「レクサス」の韓国の自動車市場での人気は、VWとアウディが消えた場所を埋めているからだ、と言う人も多い。だが、「若い世代の価値観が多様化していることも、レクサス人気の理由になっている」と全国紙の経済部記者は指摘する。20~30代が暮らしの中で求める価値観が変ってきていると言うのだ。

「輸入車が自動車市場に占める割合が10%にも満たなかった頃は輸入車に乗っていることは”富の象徴”でした。でも、今は少し違う。もちろん、外車=富と考える人もまだ多いですが、若い世代はそういう価値観とは一線を画す傾向が強くて、燃費やコストパフォーマンスにこだわり、しかも、自分たちの大げさに言えば人生の価値観に合った車を求めるようになってきています」

韓国では最近PM2.5問題が深刻で、その原因のひとつがディーゼル車から出る排気ガスといわれている。政府もディーゼル車への対策に乗り出していて、エコカーといわれるハイブリッドに注目が集まっていた。そこへ起きたのがVW事件だった。

レクサスのどこが高評価を受けているのか

全国紙経済部記者が続ける。「『レクサス』の人気は、性能、高級感、5000万ウォン台(約500万円台)という欧州車よりもお得感のある価格、そして燃費、さらに環境に優しいという『エコ』の魅力が加わったもの。若い世代で『レクサス』に手が出ない人たちも、同じような理由からトヨタやホンダのハイブリッド車を求めていると見られています」。

韓国で輸入車の割合が10%を超えたのは2012年。その頃までは輸入車に乗っていることはステータスを誇示する意味が今よりも強く、輸入車に乗っている人へのサービスは露骨に違うといわれていた。

とある駐韓日本企業の人もかつてこんな話をしていた。経費削減もあり、社用で使っていた車種をワンランク落としたら、いつも駐車していたホテルで、普段は地下の駐車場だったのが、地上の駐車場に誘導されたというのだ。その人は、「扱いが一転してぞんざいになって、韓国の人が車種にこだわる気持ちがよくわかった」と苦笑いしていた。

また、韓国では車といえば中・大型車という認識が強く、日本に旅行に行った知り合いが軽自動車の多さに驚いていたこともある。BMWの中でも5シリーズが今でも人気だが、最近増えているのはBMWの小型車ブランド「MINI」だ。日本でも輸入車の中で人気1位の同車を韓国で見かけるたびに、大げさだが、韓国社会での価値観の変化をしみじみと実感してしまう。

日本車を好むのは本当に若い人なのだろうか。そんなことを思いながら、実際にソウル市内のトヨタ販売店に足を運んでみた。すると、たまたまだったのかもしれないが、やはり、顧客には幼い子供連れの若い層が目立った。

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