香港に子どもを通わせる中国人家族のホンネ 中国大陸から香港へ通う子供たち<中>

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先生が広東語で試験の手順を説明する。親たちが話す普通話の声量に負けないよう大音響のスピーカーを使っているが、聞き取れない親もいたようだ。学校側は普通語を使うスタッフも用意していた。

親たちにこの学校を希望する理由を聞いてみた。

応募したのはほとんどが中国本土からの子どもたち

「香港は教育、衛生、交通の秩序がより良いからです。香港の小、中、高に通ってほしいです。子どもの戸籍は香港だからここの教育を受けられるし、大人になったとき、仕事を探すにもいいと思います」

募集は15人だが応募は400人近くという狭き門

そう話すのは黒いリュックを体の前に掛けて娘の手を引いていた母親。娘は香港で出産したという。

連れていた息子に白いシャツと紺のズボンというきちっとした服装させていた別の父親は次のように言う。

一途な親の思い

「香港は自由な所で、文化の面でも大陸と異なっていますから。教育の理念も大陸とは違いますから」

いずれも両親とも中国人の家庭であるという。

そのほかにも話を聞いてみたが、いずれの親たちからも、英語をはじめとする高い教育水準に期待する以上に、中国本土よりも自由で開放的、西側先進国とほぼ変わらない環境で、子どもを学ばせたいという気持ちがにじんでいるように思えた。

試験に臨む子ども。ある親は「香港は自由な所」と応募の理由を話す

子どもたちが試験を受けている間、親たちは体育館に設けられた待合室に通され学校の活動を紹介するビデオを見せられていた。沖縄で過ごした修学旅行の映像も流れた。中国本土の学校ではまずありえないだろう。その映像を食い入るように見つめていた親たちの一途な表情に、私は少しほろりとさせられた。

しかし、香港の市民は必ずしも彼らを歓迎していない。本土の子どもたちが多くやって来る地域で話を聞いてみると、予想以上に反発の声が強いのである。

宮崎 紀秀 ジャーナリスト

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みやざき のりひで / Norihide Miyazaki

日本テレビ報道局、社会部警視庁担当記者、外報部デスク、中国総局長などを経て現在はジャーナリストとして北京在住。主に「バンキシャ!」「ミヤネ屋」「ウェークアップ!ぷらす」など日本テレビ系列で放送する報道番組にコンテンツを提供。中国がらみのルポを得意とする。

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