中国の「不動産バブル」は、なぜ冷めないのか 大都市のマンションが超人気なワケ

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夜も活気で満ちる上海。中国の大都市では「バブル」と言われるほどの住宅価格の上昇が続いている(写真:kosmos / PIXTA)

中国経済では「不動産」に関する話題がいつだって注目の的だ。バブルはいつ崩壊するか。日本人の収入の数分の一しかないのに、普通の中国人はどういう手段で東京より何倍も高価なマンションを買うのか。本当に「自分の『持ち家』がなければ結婚できない」のだろうか……。

中国の不動産市場の中でも、とりわけ、世界的に注目を浴びているのが北京、上海や深圳(シンセン)のような大都市の集合住宅(中国の都市部に戸建て住宅はなく、ほぼすべてがマンション)価格のとめどない高騰ぶりだ。

たとえば私が最近聞いた話はこうだ。「2003年に北京で83万元で130平方メートルのマンションを買った。それが今や900万元(約1.5億円)にまで値上がりした」。その夫婦の年収はおよそ15万元。つまり、もし、自分たちの住んでいるマンションを今買おうとしたら、年収の60倍もの買い物になる。政府もいろいろと政策を打っているが、市民の購買意欲をなかなか沈静化できていない。

価格が高騰するのは、そこに需要があるからだ。なぜ、中国人は高いおカネを投じて、住宅を所有することに執着しているのか。なぜ、大都市でマンションを買わなければならないのか。今回、この問題をめぐる「中国のアンバランスさ」についてひもときたい。

都市と農村の格差が、住宅価格の高騰を生み出す

地域ごとに大きな格差がある国、それが中国だ。教育、医療、年金、雇用などの社会インフラは、農村部よりも地方都市、さらに地方都市よりも大都市にと、はるかに多く集中している。温水洗浄便座が徐々に普及している大都市と露天トイレが主流の農村地域。大学進学が普通になっている大都市と村全体で大学生が1人もいない地方。上海にしかない国際的大企業――。このような極大化した格差が存在していて、雲泥の差と言っても良いほどに生活環境が違う。もちろん、農村地域や地方都市は急速に発展してはいるのだが、大都市並になるには、まだまだ長い時間がかかるに違いない。

農村や地方都市の多くの若者にとって、大都市の生活はあこがれだ。インターネットを通じて、彼らは簡単に大都市の様子を把握し、今の生活状況と比較できる。地元は娯楽施設や小売施設も大都市に比べると乏しくて、夜になるとものさびしい。

一方、北京や上海は夢の世界のようだ。外国人があふれる通りに、世界最高級ホテルのラウンジ。林立する高級ブランドショップは新商品を欧米と同時に発売する。上品な服を着て余裕がありそうな美男美女は「眠らない街」をエンジョイする……。社会インフラも教育・医療レベルも農村や地方よりずっと良いし、活気にもあふれているのだ。

中国の農村や地方都市の若者からすると、大都市の生活は次のように見えている。

先に大都市に行った同郷の友人は、いつの間にかおしゃれになったし、付き合っている人たちや話の内容も何だかすごくて、まったく別の生活を送っている。地方にいると、就職先だって、勉強ができても地元の企業か地方公務員になるだけ。もったいない。親のようにこのつまらないところでいくらコツコツ頑張っても、今日と同じ明日が繰り返されるだけに違いない。自分は親と違って、こんな将来が見えないところに絶対居たくない。今のつまらない生活から脱出して、良い就職先を見つけるため、もっといい暮らしをするため、おしゃれで上品な都会っ子になるために、大都市に行かなくてはならない。

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