秩父を席巻した『あの花』の威力 アニプレックス・斎藤俊輔プロデューサーが語る制作秘話(上)

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『あの花』では、あえて秩父が舞台だとはアナウンスしてはいなかったのですが、実際に放送が始まったら絶対に秩父に来ていただけるだろうと思っていました。だからかなり早い段階で、西武鉄道さんや秩父市さんとはお話をさせていただいて、放送後の「聖地巡礼」のための準備を進めたのです。

秩父市は『あの花』一色!

――西武鉄道さんや秩父市さんと話をしたのはいつ頃だったのですか?

『あの花』が放送されたのは2011年の4月からでしたが、西武鉄道さんには2010年の秋にはもうお話をしていました。その理由は2つあって。ひとつは当然、宣伝的な意味合いですよね。公共交通というのは、アニメファンではないお客さまにも認知していただけるような媒体なので、そこで作品を告知したいなという意図がありました。

そして秩父市さんに関しては、やっぱり「聖地巡礼」はされるなと思っていたので、逆に地元の住民の方々に迷惑がかかったら嫌だなという気持ちがあったのです。アニメでもかなり忠実に再現していますし、その周りで写真撮影も行われるだろうことは考えられた。それが公共の場だったらいいのですが、私有地や誰かの自宅を撮影するような状況になってしまったり、学校に入り込んでしまうようなことになっては困りますから。もちろんファンの皆さんのことは信じていますが、それでも、もし一部にマナーの悪い人が出てしまった場合、地元の住民の方にも迷惑になりますし、結果、『あの花』にもマイナスになってしまう。ですから秩父市さんにアプローチした目的は、「聖地巡礼」に対するアフターケアという面が大きいですね。

――そのかいあってか、商店街にはあちこちに『あの花』の垂れ幕がかかっていて。町中で『あの花』をバックアップしていたのが印象的でした。

こちらとしては、そこまでやっていただけるとは思っていなかったので、本当にうれしいことですよね。

(撮影:梅谷 秀司)

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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