東芝、限定付き適正意見は「ありえないこと」

会計評論家の細野祐二氏、専門家の見解は?

綱渡りの経営が続く東芝。本来の期限から遅れに遅れて有価証券報告書を提出した(撮影:今井康一)
8月10日に東芝がようやく2017年3月期の有価証券報告書(以下「有報」)を関東財務局に提出した。PwCあらた監査法人は東芝の有報に「限定付き適正」の監査報告書を付けた。本来ならば6月末までに提出しなければならない有報を、金融庁が8月10日まで待ったのは、米原発事業の6522億円の巨額損失をいつ計上すべきだったかについて、東芝とPwCあらたが激しく対立していたからだった。有報と同日に提出した第1四半期の四半期レビュー報告書も、PwCあらたは「限定付き適正」とした。
これらの一連の東芝の騒動は、専門家にはどう映るのか。会計評論家の細野祐二氏に聞いた。

――東芝の第3四半期決算に2度の決算遅延の後、「結論の不表明」の監査レビューをしたPwCあらたが、今度は「限定付き適正」でした。

ありえないことが起きたといえる。有報の開示制度上、「限定付き適正意見」というのは金融庁の立場からいうと実務としてありえない。というのも、(適正意見を付けられない)除外事項があれば「除外事項を直して持ってこい」ということになるからだ。

会計評論家の細野祐二氏は「ありえないことが起きた」と指摘する(撮影:尾形文繁)

これは世界的にそういう流れだ。30年以上前の日本でならありうることだが、行政指導上、今では「除外事項は監査法人が会社に直させるべき」となる。限定付きでは受理されないから限定はつけない。ところが今回は限定付きなのに受理された。だから、本来ありえないことが起きたといえる。

限定付き適正意見が受理されるのは、できたばかりのベンチャー企業で除外事項を直す能力がないだとか、経理担当者が失踪していて物理的に直しようがないだとか、そういう場合は仕方がない。だが、東芝は直す能力がないわけでもないし、ましてや担当者が失踪しているわけでもない。それなのに受理したとなると、限定付き適正意見が持ち込まれて受理を拒む際、金融庁は今後どう説明するつもりなのだろうか。

当面の上場廃止危機を回避できる方法

――PwCあらたは、限定付き適正とした根拠を「2017年3月期に計上された6522億円のうちの相当程度ないしすべての金額は2016年3月期に計上されるべきだった」と監査報告書に明記しました。

会計上の「限定付き適正意見」ならば、金額を限定しなければならない。専門的になるが、金額を限定しなければ修正仕分けをしようがないからだ。それなのに、今回の「限定付き適正意見」は金額を限定していない。しかも「相当程度ないしすべての金額」だという。

一方で、影響を与える部分や何をもって除外したかはきっちり書いてある。だからどの項目を修正すべきかは一目瞭然だ。それなのに金額だけが限定されていない。PwCあらたは6522億円のすべてが間違っていると心の中では思っているはずだが、「相当程度ないしすべて」と書いた。これは「文学的限定意見」とでもいうべきものだ。

金額を限定すれば「行政指導で直させるべき」という話になり、金融庁は有報を受理できない。ところが金額が限定していなければ、そういう話にはならず、受理できる。有報が受理されれば、東京証券取引所は上場廃止の判断を先延ばしできるし、東芝は当面の上場廃止危機を回避できる。

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