志願者急増も!「夜間大学」という可能性 昼間は大学の職員として稼げる場合もある
親世代の経済状況の悪化で再び夜間大学に注目が集まっている。魅力は学費の安さだけじゃない。現役生が魅力を語る。
高校3年生になって間もない頃、父親にこう告げられた。
「大学進学は難しい」
埼玉県出身の野中麻浩(まひろ)さん(22)は父子家庭の3人きょうだいの長男。生活ぶりから、経済的に余裕がないことはわかっていた。学費の安い国公立大学を目指して勉強していた。奨学金の利用も考えたが、きょうだいのことも考え、進学は断念した。
しばらくして、大学の担当者も参加する学校主催の進学説明会があった。全員参加だったため、名前を知っている大学をいくつか回った。東洋大学(東京都文京区)のブースで、自分の状況を話した。
「新しい入試が始まるんです」
渡されたチラシには、夜間のイブニングコースの説明があった。入学金は18万円、授業料などは53万円。国公立より安い。衝撃的だった。夜間の大学があること自体、初めて知った。
さらに、新しい入試に合格すれば、昼間に東洋大の職員として働いて稼ぐことができ、また授業料の半分は給付型の奨学金が4年間支給される。これなら親に頼らなくとも働きながら大学に行ける!
経済的な理由から、夜間大学を志望する学生が増えている。東洋大の加藤建二入試部長は、夜間部の状況をこう説明する。
「戦後、勤労学生のために設置された大学夜間部は、1990年代には昼間部に入れなかった学生の受け皿となり、夜間部本来の役割が失われていた。しかし親世代の経済状況の悪化で、夜間部の役割が復活している」
夜間大学を知らない
東洋大の夜間部は全国最大規模で、6学部9学科に3381人が在籍する。東日本大震災以降、志願者は1322人(2012年度)から、3475人(17年度)に急増している。
「特に地方では経済的な理由で進学を断念する学生が多い。東洋大の場合、昼間部の学生は1都6県の比率が8割だが、夜間部は6割強だ」(加藤入試部長)
14年度からは冒頭の野中さんが受験した新たな入試制度「『独立自活』支援推薦入試」を導入。大学事務局で日中働きながら、夜間に学ぶことを前提とした入試制度だ。働く場を保障することで、地方からの学生が挑戦しやすい環境を整えた。