教育費にムダの多い人が知らない選択と集中 「見栄」が価値ある選択を妨げる

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都内のブランドエリアに住む30代の知人から聞いた話ですが、「ご主人のお勤め先は? 年収は?」が母親同士のコミュニケーションであり、最も価格帯の高いタワーマンションの上層階に住む人がボスママとして君臨するという世界があります。海外旅行は当たり前で、教育においても就学前から複数の習い事をさせ、小学校受験をさせる家も多い。

年収をあからさまに聞く文化を、下品と思わない感覚の持ち主もいるのです。価値観が合わない場所に住むと「見栄」を助長して、賢い「選択と集中」ができなくなってしまいます。

自分たちが無理せず、「選択と集中」を実践できる場所はどこか。子育てには、こうした視点も大切なのです。

教育費のコスパを見直す

塾や習い事にいったん通わせ始めると、いつのまにかそれが習慣化し、「行くのが当たり前」になってしまうこともあります。

そもそも教育費は成果を定義してから使うべきものです。集団生活から得るものや友達関係などを「長期的成果」として定義しているなら、行くことに意味があるのでOK。ですが、もしその長期的成果より、「○○できるようにしたい」と明確な「短期的成果」を重視するなら、塾や習い事の成果は、半年に1度くらいチェックするようにしたいところです。

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そうすると、意外な無駄が見えてきます。塾に行ってもまったく成績が上がらず、毎月3万円をドブに捨てているも同然なら、早々に塾に見切りをつけ、家庭教師に切り替えたほうが、確実に成果が上がり、結果的に費用も安く済みます。

スイミングにしても、年間10万円かけて何年も通っているのにまったく上達しないなら、マンツーマンの先生にお願いすれば、レッスン1回につき1万円かかったとしても、1カ月で泳げるようになるので、トータルでは安く済むのです。

子育ては初めてのことだらけですから、あとから振り返ると「無駄なおカネを使っていた!」というケースがかなりあります。「子どものために自分が求める成果は何か」「コストパフォーマンスを最短で最大化するにはどうすべきか」を考えるのが迷ったときの答えです。

林 總 公認会計士、明治大学特任教授

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はやし あつむ / Atsumu Hayashi

外資系会計事務所、監査法人を経て独立。『餃子屋と高級フレンチではどちらが儲かるか』(ダイヤモンド社)、『ドラッカーと会計の話をしよう』(中経出版)、『正しい家計管理』(WAVE出版)ほか著書多数。家計も会社経営も子どもの教育も目的は同じで、「お金」に振り回されるのではなく、「満足度の高い人生」を送るために使うべきだと説く。4人の息子の父親であり、会計のプロでもあることから、独自のアドバイスを展開している。

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